研究課題/領域番号 |
18K00170
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
宮崎 法子 実践女子大学, 文学部, 教授 (20135601)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 実景図 / 倣古 / 文人山水図 / 元四大家 / 趙孟fu / 董其昌 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究の実施内容は、以下の通り。 その1は、前年度末の上海博物館の国際シンポジウムでの口頭発表の内容を増補した中文論文「従≪婉レン草堂図≫看“以天地為師”」を董其昌書画芸術研究論文集掲載のため上海博物館へ送付した。論文集は、2019年12月に刊行予定であったが現在未刊である。 その2は、論文集『中国絵画の内と外』(中公美術出版 2020年2月)を刊行し、そこに、実景山水図にかかわる論文4編(①上海博物館蔵「西湖図」と北京故宮博物院蔵「西湖草堂図」について、②「瀟湘臥遊図巻」から趙孟fuへ③呉派初期の別業図ー沈周「東荘図」冊を中心に、④董其昌山水画におえる実景)を収録した。これは以前に発表した論考であるが、内容を再検討するなかで得た新資料を使用して改訂を行った。特に、②元代の趙孟fuにおける宋画の参照と実景描写の係わりについては、新たにいくつかの新知見を示すことが出来た。 これらは主に文献資料の見直しと新たな資料収集により導かれた知見であり、またそれらの作業を通じて、元の文人画家による実景山水画制作について重要な資料を入手し、それらをもとに元代の趙孟fuと四大家による実景描写について再検討する作業を進めることができた。ただ、それと関連する調査として、1月から3月に予定していた台湾や中国の調査が、新型コロナウィルスの蔓延により実現出来ず、さらに海外のみならず国内の調査も実施が不可能になり、所期の調査を遂行することが出来ず、次年度に持ち越しの状態になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度にすでに研究成果の一部を国際学会で発表し、また論文の公刊も行った。また、昨年度に出版した従来の論文を集めた論文集に所載の本テーマに関する既刊の論文に新知見を補足することができた。しかし、昨年度末の新型コロナウィルス禍により、2019年2月3月に予定していた台湾と中国の現地調査が実施出来なくなった。また、今年度も、夏期休暇中に予定していた中国やアメリカでの調査も実施が難しく、今後の調査の見通しは立っていない。今後の研究計画の変更を余儀なくされている現状で有り、また状況も流動的なため、当分は、状況を見ながら、柔軟性をもって計画の再検討を逐次行っていかざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの影響により、2月3月に予定していた中国での現地調査や、北米や台湾、国内の展覧会調査が実施出来ず、予定していた調査活動が実現出来ない状況が続いている。そのため、今後の研究の方針転換が必要になっている。 この状況下で、当面は、これまで収集した文献資料の再検討や、新たな文献資料やインターネットを利用した精細画像を購入収集し、主に文献と絵画画像や跋文の画像によって、文人山水画の基礎を築き後世に大きな影響を与えた元の趙孟fuと、その影響を受けて文人山水画の古典様式を打ち立てた元末四大家のうち特に実際の地名を冠した山水画を多く制作した黄公望と王蒙を中心に、実景とその山水画創作の係わりについて、考察を進める。それを通じて、実作品に即して、画家と周辺の人物との交流や描かれた土地との係わりをより具体的に確認し、今後現地調査が可能になったときに、より効果的な現地調査を遂行できるように準備を進めるものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年中は、論文集の出版に関する既刊論文の注や関連資料の再検討作業に多くの時間を費やしたため、調査のための時間がとれなかった。その出版後の2020年2月から3月にかけて計画していた中国調査旅行、台北調査や国内調査が、新型コロナウィルスによる移動の自粛や制限によって実施出来ずに終わったことが最も大きな理由である。 今後も、海外での本格的な調査活動には困難が予想される。状況を見て調査を再開する予定だが、当面は、海外研究者との研究交流や連絡を保ちつつ、国内外の美術館のインターネット上の情報公開を利用し、購入可能な精細画像を購入し、また画像以外のデジタル文献や関連資料の入手に努め、それらと入手済みの資料を活用し研究を進める。同時に、調査再開の際に、より効率的な調査が行えるように準備する。
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