研究課題/領域番号 |
18K00171
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
鶴岡 明美 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (90422568)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 谷文晁 / 写山楼 / 都市江戸の文人文化 / 谷文一 / 円山応挙 / 二世谷文一 / 喜多武清 / 野村文紹 |
研究実績の概要 |
今年度は平成30年度以降継続的に行っていた下記の項目について成果を得た。 ①明治以降発表された、谷文晁に関する文献の収集、整理について、谷文晁の晩年の門人である野村文紹が明治期にまとめた著書『写山楼之記』の分析を行い、この時期における文晁に関する情報の一端を明らかにするともに、著者である文紹の事績や、文晁の孫である二世谷文一を始めとする交友関係についても検討を試みた。 ②文晁とその係累、門人による本絵・粉本類の所在調査、所在が明らかなものについての調査について、(1)門人喜多武清が挿絵を担当した『優曇華物語』についての研究に進展が見られた。様々な側面からの比較検討の結果、円山応挙「七難七福図巻」との関係は、表層的な図の借用にとどまらず、両作品の根底にある観音信仰をも共有することが明らかになり、この時期の視覚芸術を含む仏教文化のネットワークの様相の解明という、より広い領域への展開が期待される。(2)福島県本宮市所在の「蛇の鼻御殿」は当地の豪農伊藤弥の別荘として明治37年に完成したが、この建物内には谷文晁や文一、喜多武清などによる障壁画が多数あることで知られていた。今年度これらの障壁画についての調査を実施し、多くの新知見を得ることができた。とりわけ喜多武清による「山水図襖」(4面)は、南宋院体画の風を帯び、室町水墨画の系譜にも連なる技法を習得していたことを示す大作である。武清の画業の解明が進んでいるとは言えないなか、貴重な作例として位置づけることが可能である。年紀を欠くものの、署名のスタイルと印章からおおよその年代を割り出すことは可能と思われ、今後武清の画風展開をまとめるうえで指標となる作例の一つとなると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はコロナ感染予防のため休業期間を設けたり、予約制を導入する施設が多数見られ、当初予定していた作品調査をほとんど実施することができなかった。文献調査についても国立国会図書館の予約制による利用制限を筆頭として、充分に行える環境になかった。加えてオンライン授業の実施により、授業準備や学生に対するフォローなど、教育にかけるエフォートを例年より高くせざるを得なかったため、研究時間の確保も難しい状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
①文晁およびその係累と門人に関する記録の抽出については、これまでに収集した記録の整理を進める。なかでも斎藤月岑による『テキ巣漫筆』(30册、国立国会図書館蔵)における情報の分析を重点的に行う。 ②文晁およびその係累と門人に関する作品の調査と分析については、これまでの調査結果の整理を行うとともに、秋田市立千秋美術館(秋田県秋田市)本間美術館(山形県酒田市)田原市博物館(愛知県田原市)など、未実施の作品調査を可能な限り実施する。 ③文晁関連文献について、調査項目を決定して整理を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定していた国内調査の大部分がコロナ感染予防対策のため中止となったこと、国立国会図書館を始めとする図書館・資料館の利用も最低限としたことなどにより、次年度使用額が生じた。 2021年度および2022年度は、前年度に実施することができなかった件を含む国内調査を計画・実施するとともに、写山楼一門関連文献のデータベース化に向けての継続的な資料収集、整理、システム構築に関する支出を継続して行う。
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