研究課題/領域番号 |
18K00174
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
肥田 路美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00318718)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 道宣 / 霊験説話 / 聖寺 / 注釈 / 初唐時代 / 仏教美術 |
研究実績の概要 |
2019年度は、初唐道宣の晩年の著作『集神州三宝感通録』巻下のうち〈聖寺録〉の読解と詳細な語注をおこなった。〈聖寺録〉は、聖寺あるいは仙寺とよばれた中国各地の実在ないし架空の寺院に関する感通説話12編を集成したものである。『大正新脩大蔵経』巻52の423頁上段~425頁上段のテキストを底本とし、序、聖寺録目録、臨海天台山石梁聖寺、東海蓬莱山聖寺、抱罕臨河唐述谷仙寺、 相州石鼓山竹林聖寺、巌州林李慮山霊隠聖寺、晋陽冥寂山聖寺、岱州五臺山太孚聖寺までを扱った。注解にあたってはこれまでと同様に、単なる語釈に留まらず、常に仏教美術史、仏教信仰史の観点から内容の拡大的解釈を試みた。 研究協力者として早稲田大学文学研究科美術史学コースの博士課程、修士課程在学生をはじめ、東洋哲学コース博士課程学生、リサーチフェローとして本学に研究滞在中の中国人研究者ら合計15名の協力を得て、密な意見交換を定期的におこないつつ課題を遂行し、一年間の研究成果を『美術史料として読む『集神州三宝感通録』―釈読と研究(十二)』としてまとめた。 A4版総ページ数は205頁にのぼり、付注項目は計136に及んだ。 注解の主だった事項には、降霊、三洲、賓頭盧、天台山、石梁聖寺、禅観、端坐して入定、王羲之と天台山、東海蓬莱山、杯度道人、鉢袋、唐述谷寺、禹貢の極地、山を鐫って室を構える、飲酒、竹林寺、石窟寺、眉長く鼻高い風貌、僧房、三門、門額、牛のような犬、講堂、床、高座、北斉の晋陽、白い駱駝、冥寂山、木井寺、劉桃枝、中臺、故皮 などがある。 また、関係する問題を掘り下げた研究ノートとして、「天台山石梁イメージの受容―曽我蕭白「石橋図」を中心とした考察」「表象された蓬莱説話」「日本における不邪婬戒に関する考察」「相州鼓山竹林寺」「聖寺と天馬」「偶将心地問高士、坐指浮生一夢中―正倉院蔵金銀平文琴研究」の6編を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に当たる2018年度には進捗に遅れが生じたが、二年目の本年度にはそれを取り戻すべく一年間を通してエフォートの率を高くし、計画的に進めることで挽回することができた。但し、成果報告書の編集作業に入った2019年12月以降は、コロナ感染症流行の影響で研究協力者らとの検討会や共同作業が困難となり、研究代表者肥田が全作業を独りで行ったことと、3月に入ってますます情況が深刻化したせいで、印刷会社側でも作業日程に支障が生じ、結果的に報告書刊行が予定より一か月遅れ、年度をまたいだ4月末にずれ込むこととなった。また関係の諸研究機関も多くが休止しているため、配布は当分の間見合さざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染症の流行が今年度も容易には収束しない見通しであるため、当初計画していた現地調査は実施が不可能であるが、研究の中核であるテキストの読解・語釈は予定通り推進に支障ないものと考える。そこで、3年目となる2020年度は、〈聖寺録〉の続きとなる西域黒蜂山石窟聖寺、雍州太一山九空仙寺、終南山大秦嶺竹林寺、梁州道子午関南独聖寺、終南山折谷炬明聖寺条と、〈瑞経録〉序、曇無竭、釈道安、釈僧生、釈道冏、釈普明、釈慧果、釈恵進、釈弘明、孫敬徳、釈道琳条に取り組む。また年度末には一年間の研究成果を『美術史料として読む『集神州三宝感通録』―釈読と研究(十三)』として刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症流行の影響で、当初2019年度内に刊行予定だった19年度の成果報告書『美術史料として読む『集神州三宝感通録』―釈読と研究(十二)』の編集・印刷作業が遅れ、一か月余遅れた次年度(2020年度)4月30日に納品されることとなり、経費処理が20年度にずれ込んだ。また、2020年3月に予定していた中国甘粛省での現地調査の実施も、次年度に延期せざるを得なくなったため。
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