研究課題/領域番号 |
18K00178
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
瀬谷 愛 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 室長 (50555133)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中世律宗 / 一遍聖絵 / 聖徳太子二歳像 / 法隆寺東院舎利殿 / 文王呂尚図・商山四晧図屏風 / 尾道浄土寺 / 持光寺 / 釈迦八相図 |
研究実績の概要 |
2年目となる令和元年度は、これまでの研究成果を発表、刊行した。「社寺参詣曼荼羅としての一遍聖絵」(五味文彦編『国宝一遍聖絵の全貌』)は、「中世社寺縁起絵・高僧伝絵の成立と近世的受容」(課題番号15K16654)の成果で、現研究課題の発想の原点である。1年目に行なったハーバード大学美術館との共同調査の研究成果は、同館開催の特別展「Prince Shotoku: The Secrets Within」(令和元年5月25日~8月 11日)に伴うStudy Dayにて口頭発表した(Passage to the Pure Land: The Sedgwick Shotoku and the Cult of the Dancing Priest Ippen (1239-1289)、元年5月28日)。1年目に国際シンポジウム「日本仏教の展開とその造形」(ハーバード大学ライシャワーセンター、龍谷大学アジア仏教文化研究センター 共同主催、於ハーバード大学)にて口頭発表した、中世律宗の重要拠点・法隆寺東院舎利殿の美術に関する論考を刊行した(「法隆寺東院舎利殿の美術と中世律宗」『日本仏教の展開とその造形』)。またその概要を「法隆寺舎利殿障子絵の制作背景」(『法隆寺献納宝物特別調査概報XL 文王呂尚・商山四晧図屏風2』)にまとめた。 作品調査等では、中世律宗の重要拠点である広島・尾道浄土寺の近くに所在する浄土宗寺院・持光寺にて、「釈迦八相図」の調査撮影を行なった。その作風と中世尾道の状況から、この大画面説話画の優品を14世紀の浄土寺再興にあたって制作されたものと位置づける試論(「大画面祖師絵伝と西大寺流律宗」)を、1年目に行なった尾道浄土寺の宝物に関する研究成果とともに、特別展「聖徳太子信仰―鎌倉仏教の基層と尾道浄土寺の名宝―」展覧会図録(神奈川県立金沢文庫)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの作品調査や現地踏査によって蓄積できた研究成果を、口頭発表や刊行物によって国内外で報告することにより、全国に広く拠点を持って様々な宗派と交流した中世律宗の多面的な活動の一端を明らかにすることができた。また、引き続き隣接分野、国内外の研究者との連携、作品調査を行なうことにより、成果を蓄積できた。
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今後の研究の推進方策 |
作品調査により着想を得た仮説を、全国各地に残る中世の建築物や遺物等に照らして検証し、『東京国立博物館紀要』にて発表する予定である。 しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、令和元年度の第四四半期には移動を伴う作品調査が困難になり、令和2年度も同様の状況が続くと推測される。当面はこれまでに得られた調査成果の分析、発表を優先し、社会状況に応じて国内外の作品調査、現地踏査を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、予定していた国内外の移動を伴う作品調査が困難になり、令和元年度分を想定していた旅費等を繰り越した。
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