研究課題/領域番号 |
18K00178
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
瀬谷 愛 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 室長 (50555133)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中世律宗 / 忍性 / 一遍 / 聖戒 / 東征伝絵巻 / 一遍聖絵 / 聖徳太子絵伝 / 聖徳太子二歳像 |
研究実績の概要 |
研究期間を延長して4年目となる令和3年度は、引き続き新型コロナウイルスの感染拡大により移動を伴う作品調査等が困難であったため、本研究課題で取り組んできた研究について考察を深め、暫定的総括としての論文を執筆、刊行した。 論文では、日本中世において全国的に展開した律宗諸宗派が、どのような絵画作品の制作に関与したかを、13世紀末から14世紀にかけての代表的な仏教美術を通してまとめた。具体的には、西大寺流極楽寺忍性が永仁6年(1298)、唐招提寺に施入した「東征伝絵巻」の背景に唐招提寺中興二世証玄の七回忌追善があったこと、承安元年(1299)、「一遍聖絵」の成立背景に律宗の関与がみられること、「一遍聖絵」の発願者聖戒が永仁3年(1295)、四天王寺において当時の別当・極楽寺忍性とともに聖徳太子像を造像した可能性があることなどから、中世律宗が流派、宗派の垣根を越えて広く活動し、現存する作例に関わっていた様子を見出した。 また、とくに西大寺流律宗が進めた聖徳太子信仰の布教をめぐっては、これを契機に聖徳太子二歳像や掛幅形式の聖徳太子絵伝といった新しい造形が誕生した可能性を見出すことができ、現存する多くの作例の発生源として指摘した。さらに、律僧がその強力なネットワークを駆使し、尾道浄土寺や法隆寺東院舎利殿の復興を手掛けた過程でも、多くの名作が誕生し、今日に残されている。令和3年は聖徳太子1400年遠忌にあたり、多くの記念展覧会が開催された。本研究課題による研究成果もこれらの展覧会、図録にて引用された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染再拡大により、移動を伴う作品調査を計画的に行うことが困難であった。一方で、本研究課題にかかる成果を論文として総括、刊行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度への研究期間延長を予定しているが、移動を伴う作品調査は比較的実現が可能になると予想される。流行が抑えられた時機に追加の作品調査、これまでの調査分析、成果発表を積極的に行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の本務状況、本研究課題にかかる国内外の移動を伴う作品調査計画、新型コロナウイルスの感染拡大の調整が困難であったため、予定していた旅費、人件費等を繰り越した。令和4年度には国内調査に関する旅費、調査補助・撮影等の人件費、成果発表のための諸経費として使用する。
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