研究期間を延長して6年目となる令和5年度は、中世律宗の活動と美術工芸、資料等文化財の制作に関する今後の研究の展開を見通した調査や、これまで研究課題で取り組んできた成果の一部を論文にまとめる作業を行った。 国内で行った調査では、全国に活動を展開した中世律宗の足跡を追うため、山口・二尊院、茨城・極楽寺跡、佐賀・東妙寺、京都・橋寺放生院、福岡・大乗寺跡、富山・国分寺跡等を踏査し、関連資料の収集を行った。中世律宗の活動と地理について有益な情報を得ることができたため、今後は具体的な文化財の調査研究による知見とあわせた総合的な研究計画を立て、遂行していきたい。 研究成果となる論文では、平成29年(2017)に本研究課題の基礎となる研究課題(15K16654、中世社寺縁起絵・高僧伝絵の成立と近世的受容、2015~2018年)の成果として行った特集展示「幕府祈願所 霊雲寺の名宝」(東京国立博物館、2017年4月25日~6月4日)に新たな知見を加筆した論考をまとめ、近世真言律に関する隣接分野の研究者による学術成果とともに『寺院文献資料学の新展開 第8巻 近世仏教資料の諸相Ⅰ』(校正中、令和6年度刊行)に掲載予定である。 また、令和4年(2022)に本研究課題の成果として発表した「中世律宗絵画史論」で比較考察した「法華経曼荼羅図」(富山・本法寺)について、追加調査の内容を含めた論文をまとめ、美術史学、国文学等隣接分野の研究者による学術成果とともに『描かれた法華経 本法寺蔵法華経曼荼羅図の時空(仮)』(令和6年度刊行)に掲載予定である。
|