研究課題/領域番号 |
18K00189
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研究機関 | 秋田公立美術大学 |
研究代表者 |
志邨 匠子 秋田公立美術大学, 大学院, 教授 (00299926)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日米美術交流 / 冷戦 / 占領下 |
研究実績の概要 |
冷戦下,アメリカは日本を防共の砦として位置づけ,アメリカに対しては親日世論を,日本 に対しては親米世論の育成をはかった。その中でアメリカ美術はどのような役割を果たしたのか。本研究の目的は,①占領下の日本で開催されたアメリカおよびアメリカ美術関連の展覧会について,② 占領下の日本の新聞・雑誌におけるアメリカ美術について,③GHQによる美術行政とアメリカ美術の関係について,の3点を調査研究することにより,占領下,アメリカ美術が文化政策にどのように関わり、日本がそれをどのように受容したのかを明らかにすることである。 2018年度は、主に以下の2点について、研究をすすめた。①「占領下の日本で開催されたアメリカおよびアメリカ美術関連の展覧会について」は、GHQ/SCAP資料から、1949年にGHQにより計画された「アメリカ絵画展」関連の資料を中心に、再考をおこなった。②「占領下の日本の新聞・雑誌におけるアメリカ美術について」は,主に当時の新聞や雑誌記事を網羅的に調査・分析した。特にアメリカ在住の日本人画家たちや,その後渡米する長谷川三郎によるアメリカ美術の紹介記事などを分析し,日本の美術家たちに及ぼした影響につい ても考察をおこなった。 これらの調査研究は、占領下の日本において、アメリカ美術がどのように紹介され、受容されたのかを明らかにする上で重要なものである。「アメリカ絵画展」計画は、アメリカ側から日本人に親米世論の形成と民主主義の教育的効果を期待したものであり、また日本の新聞・雑誌におけるアメリカ美術の紹介は、結果的に、日本の美術家たちに、親米意識を芽生えさせるものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、体調不良により断続的に入院と療養が続いた。国立国会図書館をはじめ、都内図書館、美術館等での調査、関西方面への調査旅行を計画していたが、電車移動が困難であったため断念し、自宅で文献資料を読み込む作業が主となった。一部の資料は、国会図書館の郵送による複写依頼を活用して収集し、可能な限り研究をすすめた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、主にGHQによる美術行政とアメリカ美術の関係についての考察をおこなう。特にアメリカ博覧会の対応にあたった美術史家 ジョージ・N・ケイツ(George N. Kates)についての調査をおこなう。国会図書館憲政資料室のGHQ/SCAP文書の他,ワシントンDCのアメリカ美術公文書館がケイツの書簡類を所蔵しているので,現地で調査をおこなう。ただし体調面で問題が生じた場合は、国内での調査に限定し、海外調査は2020年度におこなう可能性もある。 また2019-20年度では、当初の計画に加え、できる限り、2018年度に完遂できなかった資料収集と分析をすすめ、その成果を大学の研究紀要等に発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、体調不良により、当初配分していた旅費、謝金を使用できなかったため、次年度に繰り越す金額が生じた。2019年度は、前年から繰り越した費用を、都内や関西方面での調査旅費として使用し、新たに配分された費用は、基本的に計画通り、海外・国内調査旅費や物品費、謝金等に使用する予定である。
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