研究課題/領域番号 |
18K00191
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森山 緑 慶應義塾大学, 文学部(三田), 講師(非常勤) (20779326)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 現代美術 / 剥製 / 毛皮 / 狩猟 / 環境問題 / 展覧会 / 鑑賞体験 / データベース |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に実施できなかった日本の作家・名和晃平氏への取材を5月に行なった。京都のスタジオに伺い、制作の現場を見学させていただくとともに、同氏および協働しているスタッフの方々にも話を伺うことができた。名和の作品は、本研究の動機の一つとしてたいへん重要な意味を持っており、なぜ剥製を用いることとなったのか、また本来は標本である剥製をどのように現代美術作品としているのかについて、多くの知見を得られた。これを元に論考を執筆し、2020年度中に発表予定である。 また、申請時の計画に入れていた海外調査を2020年2月に行なった。剥製や標本といった自然科学系の材料を用いて1990年代から発表している英国人作家ダミアン・ハーストについては、ロンドンのテート美術館アーカイヴにて、2012年の回顧展資料を調査することができた。さらにロンドン芸術大学チェルシー・コレッジにて、旧知である芸術家、教員でもあるジグーネ・ハマン氏の紹介により、クイン(Malcolm Quinn)教授と面談の機会を得て、剥製を用いたアーティストに関する情報を多数得ることができた。計画書にあったフィッツパトリック (Edwina Fitzpatrick)教授にも面会をし、インタビューをさせていただいた。同氏が手がけた2015年の展覧会につき詳細なコメントを得ることができた。ドイツ、ハンブルク大学のブレント (Petra Lang-Brendt)教授とは残念ながら面会することが叶わなかったものの、後日、Skype にて遠隔ミーティングの機会を得ることができ、本研究の意義について、たいへん高い評価をいただくことができた。今後も情報交換を進めていくことを了承いただき、研究の進捗を共有していく予定である。 これらを踏まえて、データベース入力を継続している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の大きな作業として、海外調査があった。感染症が欧州で拡大する直前であったために遂行することができたが、時間的制約(日数等)があったため、当初計画の一部が未実施である。たとえば、ロンドンでの剥製ワークショップの取材や、実際に制作しているアーティストへの取材などがそれにあたる。しかし、研究者や芸術大学の教員との面談、取材を通じて多くのアーティストや作品の情報が収集できたことは、計画以上の進展があったと考えている。 データベースの入力については、これらの調査を踏まえて進めているが、周辺資料(文献やインターネットサイト等の情報)の収集がまだ追いついていないので、今後はこの点にも注力していく。
|
今後の研究の推進方策 |
さらなる研究課題として、国内の剥製美術についての追加的調査が必要だと考えている。その一方で、計画では欧米における「アニマル・スタディーズ」分野の調査を盛り込んでいるが、現在の感染症拡大の状況から、2020年度にどこまで実施できるか先行きが不透明な状態である。 海外調査が困難であるとすれば、オンラインでのインタビュー取材等の代替措置を考える必要が出てくるだろう。また、現在、文献資料の海外からの取り寄せなども、感染症拡大下で物流が制限されていたりするなど、予定外のことが発生している。状況を見極めながら、国内でできる限りのことを模索していかなければならない状態である。 それに伴いデータベース構築作業も多少、影響を受けることが懸念される。 また2020年度は最終年度であるので、学会での発表、論文の投稿を積極的に実施していく予定である。
|