本研究は、特定の機能や場所から切り離され、枠づけられることで自律した存在となる絵画― すなわち「タブロー」― の成立と展開を「タブローとしての歴史画」の観点から問い直すものである。とりわけ、その展開に重要な役割を果たした17世紀の画家ニコラ・プッサンの造形(視覚)システムと、彼を模範とした王立絵画彫刻アカデミーにおける歴史画の理論化に着目した。宗教的機能などから自律した絵画(タブロー)が成立し、やがてはその枠組みを揺るがすモダニズム絵画へと至る、その節目に存在するプッサンの視覚論の限界と同時にそれが内包していた多様性について検証し、西洋特有の絵画形態であるタブロー研究に新たな視座を提供した。
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