藤島武二の作品の画像、資料を整理し、内容の分析をおこなった。特にほとんど紹介されていなかった「画稿帖」に描かれている様々な海外のイラストの原画について、その多くが『The Studio』から取られていたことを明らかにし、2020年3月に学科紀要『実践女子大学美學美術史學』で発表した。また「蝶供養帖」など多くのスケッチをもとに、藤島の画業について詳しく検討した。東京都公文書館ではシカゴコロンブス博覧会出品関係の文書など藤島の履歴に関わる資料を調査した。これらをもとにジェンダー論の視点から分析を加え、著書『女性像が映す日本ー合わせ鏡の中の自画像』(2019年)の主に4章として出版した。藤島が関わった二科の分裂に関しては台東区立森鴎外記念館の図録(2021年4月)にコラムを寄稿した。2019年12月には藤島武二の台湾出張時のスケッチやスケッチブックに記載された情報をもとに台湾の財団法人福禄文化基金会の招聘により、台北でおこなわれた国立中央研究院の主催した国際シンポジウムで発表をおこなった。また台北のコレクターの所蔵する日本の官展画家の作品を調査した。また藤島の年譜的事実の確認のため、群馬県立近代美術館が所蔵する湯浅一郎資料を調査した。湯浅は、藤島が山本芳翠の画塾生巧館で学んだ時代の友人である。 藤島周辺の官展に関する調査としては、藤島と並ぶ官展の重鎮である岡田三郎助が指導した女性画家について研究をおこなった。いわさきちひろの記録から岡田の指導を分析した。官展で評価を確立した有馬さとえについてはご遺族に聞き取りをおこない、作品を修理し、2019年1月に実践女子大学香雪記念資料館で展示をおこなった。これについては資料館館報に報告を掲載した(2020年3月)。官展での女性画家の位置については明治美術学会での口頭発表、国際シンポジウムでの発表をおこない、大学紀要、国立西洋美術館紀要、論文集に寄稿した。
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