本研究で明らかにしようと試みた7、8世紀の造仏は、寺院造営を担う役所である造寺司の下位組織たる官営造仏所が牽引していた。そこには当時最高の技術を有す工人が所属し、最新のデザインと素材を用いて次々に新しい仏像を生み出していたのである。とはいえ現存作例をみると、似通ったプロポーションや顔立ちの仏像が多い。これら仏像制作の一端を研究することは美術史ばかりでなく、奈良時代文化の源流たる中国唐代や朝鮮半島といった東アジアを包括的に理解する手助けとなろう。さらには多くの人々が「仏像のつくりかた」の一部を知ることで、歴史学を通じて日本の古き美に興味を抱き、未来へ貴重な文化遺産を伝えていく意識を高められよう。
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