研究課題/領域番号 |
18K00196
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鈴木 桂子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (10551137)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 美術史 / グローバル・ヒストリー / 服飾史 / 異文化交流 / 経済史 / きもの文化 |
研究実績の概要 |
これまでの研究成果の一部を、2021月12月2日に、シンガポールのYale-NUS (National University of Singapore) College主催による国際ワークショップ“Designing Modern Japan: Visualizing the Modern Experience in Japan and Asia,”の基調講演“Designs and their Dissemination in Japan and Asia,” として発表した。本発表では、「きもの」文化を中心とした染色デザインの世界的連環を以下の2方向から論じた。(1)16世紀以降のインド更紗(のデザイン)のグローバルな流通の影響を鑑み、インド更紗・バティック・和更紗・京友禅(手描き・型友禅・手捺染)・機械捺染(「アフリカン・プリント」を含む)の、デザイン・技術の連環を歴史的に論じた。(2)日本の伝統的なデザイン「和柄」から始まったアロハシャツの(デザインの)世界的な普及を、消費・利用主導の普及事例として論じた。これにより、染色デザインの世界的連環を論じるにあたっての(1)染色技術と、(2)消費・利用の二方向からアプローチによる複数地域での研究の重要性を論じた。 2020年度、国際ワークショップ『Dutch Textiles in Global History: Interconnections of Trade, Design, and Labour, 1600-2000』をオンライン開催した。報告者は、2021年度初頭より、同ワークショップで発表した“Kimonos” and their Inspired Products as Embodiments of Global Interconnectivity“について、さらに研究を進めるとともに、国際ワークショップのフォローアップの可能性を模索した。結果、日英の研究者4名と “Fashioning "Misunderstanding": Transcultural Engagements and the Material Culture of Fashion”というパネルを組み、The Association for Asian StudiesのAAS 2022 Annual Conferenceに採択され、3月26日に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の進捗には、新型コロナウィルスの感染状況が強く影響していると言わざるを得ないが、アロハシャツについては、上記のAAS 2022 Annual Conference参加の機会を利用し、ハワイで現地調査を遂行することができた。アロハシャツ関係業者への聞き取り調査の他、ホノルル美術館のアロハシャツコレクションの調査及び学芸員との意見交換、また参考資料の購入などもでき、その面では研究は大きく進捗した。また、アロハシャツのアジア各地での利用状況の情報収集もかなり進んだ。これらをベースとした、米国本土及びハワイとアジア各地での調査は、来年度以降となる予定である。 2021年度は、ハワイでの聞き取り調査以外、国内外での聞き取り調査は計画通りに進まなかったが、文献調査はかなり集中して進めることができた。19世紀前半以降の日本機械捺染史(輸入・輸出を含む)の再検証・補完に関しては、日蘭貿易による機械捺染生地の輸入の歴史についてかなり理解を深めることができた。また、明治以降戦前までの「きもの文化」の再確認という意味も含め、MCD(民博コスチュームデータベース)プロジェクトに参加し、「身装画像データベース」を使い、身装文化の変容の様子を詳細に分析した。 アフリカン・プリントについても文献調査を進めることができたが、オランダでの現地調査が実現しておらず、その点で研究が遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を進める過程で、(1)機械捺染の近代史・現代史の断絶、(2)地域毎、製品の素材や使われた染織技術毎に分断された産業史・「きもの」文化史、という学術的に極めて重要な問題点二つを改めて認識した。この問題点に取り組むため、2021年度 基盤研究(C)に応募し、採択された。本研究課題を理論的に継続・展開させるものとして、研究課題「「きもの」文化から視るグローバル・ヒストリー―染色技術・デザイン・製品を中心に」(令和3年度~8年度)に取り組んでいる。 本研究は、従来の地域毎、製品の素材や使われた染織技術毎に分断された産業史・「きもの」文化史では見えてこない、グローバルな広がりのある染色の文化を多極的に考察するものである。具体的には、(1)19世紀前半以降の日本機械捺染史(輸入・輸出を含む)の再検証・補完、(2)京都と北関東に焦点を当てた染物と織物の技術・デザイン・製品の相互関係、(3)ハワイのアロハシャツと京都の捺染産業との関係、の3点に焦点を当て、様々な時空間のレベルに染色の文化を位置づけ、その意味を再検討する。こういった具体的な事例を積み重ねることにより、捺染の技術を、「西洋から導入された技術と位置づけ、それにより淘汰されていく非西洋」という従来のナラチィヴィティを越え、日本から他地域への影響・流通をも加えた、よりバランスのとれたグローバル・ヒストリーのナラチィヴィティの創出をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由の多くは、コロナウィルス感染拡大状況に起因する。拡大状況の影響を強く受け、2020年3月以降予定していた国内外での現地調査は、ハワイ以外ほぼ実施できておらず、計上していた旅費が執行できていない。 今後の使用計画もコロナウィルス感染拡大の状況如何となることが予想されるが、次年度に、国内外の調査が可能となるようであれば、旅費・参考資料購入に研究費を執行する。また、学生を雇用し、これまで蓄積してきた資料の整理作業をする。
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