| 研究課題/領域番号 |
18K00204
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| 研究機関 | 東京藝術大学 |
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研究代表者 |
相原 健作 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (50376894)
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| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 金属工芸 / 鍛金 / 彫金 / 文化財 / 非破壊調査 / 復元 / 工芸 / 美術 |
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| 研究実績の概要 |
一枚の鉄板からあらゆる形状を作り出す、世界に類を見ない鉄打ち出し技法は、明治期に山田宗美が創出した。この技法を用いた作品群は、国内外で高く評価され、現在も注目を集める。しかし、作品は残されたが、技法は現代に継承されず断絶されてしまった。さまざまな金属工芸作家が再現を試みてきたが、いまだに完成に至っていない。これまでの再現は、技法に焦点をあて、科学的調査や材料学的検討はおこなってこなかった。鉄打ち出し技法の再現には、技法以前の材料から検討することと科学的分析手法を用いて評価することが重要である。失われた技法を、残された資料とこれまで使用されてこなかった和鉄を材料として科学的な検証をおこない、鉄打ち出し技法の再現手法の確立を目指す。平成30年度には資料調査として、山田宗美の作品を所蔵する加賀市立美術及び山田宗美の生家で実施した。東京藝術大学が所蔵する瓢型花瓶の詳細な形状を把握するために３Dスキャナーと３Dプリンターを使用して同寸法の樹脂性の複製品を出力した。予備実験として、炭素量が0.03％以下の純鉄で冷間での打ち出し実験を実施した。令和元年度には、たたらで作られた和鉄、純鉄、一般的な鉄の３種類の鉄を用いて、大気中と炭を用いた還元雰囲気中で、温度変化による酸化被膜の生成状況の実験をおこなった。展延性が優れ、酸化をしない純銀を用いて、瓢型花瓶の再現実験を実施した。令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、研究計画通りに進展しなかったが、材料学視点より、鉄の加工時における最適温度を推定することが出来た。令和３年度には、最適温度を維持できる火床を制作して、和鉄を用いて再現実験を実施する。出来上がった再現作品とオリジナルの作品を比較して、鉄打ち出し技法の再現工程を実証する。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現代に継承されなかった、山田宗美が創出した鉄打ち出し技法を明らかにするために研究を進めてきたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、研究計画通りに実施できなった。瓢型花瓶の特徴である大きな凸凹を打ち出すための、特製の当金を５本製作した。純銀を使用した再現実験で、瓢のくびれ部（直径24㎜）周囲を作る際に、既存の当金では対処が難しく、その部位に合った特製の当金を作ることで、地金に極端な負荷がかからないようになった。この当金により、既存の当金を使用した時よりも、無理なく形を再現出来るようになった。特製の当金を製作したことで、新たな形状の金鎚が必要となり、柄から叩く面方向に長い特殊な金鎚が必要であることがわかった。金鎚の叩く面は、天地方向に丸みをつけて、金鎚の角が地金に当たらないようにすることが大切である。凹部には、少し軽めの金鎚で叩くのが効果的であった。今までの実験から製作工程は、冷間加工（熱を与えずに）と熱間加工を併用して叩いたと推測する。特に熱間加工では酸化による強度低下があるために、鉄の温度が900度を超えないことが重要であるため、温度指示チョークを購入した。
純銀を使用した再現実験を終えて、その際に必要となった特製の当金と金鎚を製作して、製作における道具類の準備は揃ってきた。材料となる和鉄も入手済みで、製作環境は整ってきている。
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| 今後の研究の推進方策 |
一枚の鉄板から、あらゆる形を作り出す鉄打ち出し技法を再現するために歴史的資料調査及び予備実験、制作環境整備を進めてきた。今年度は、最終年度として和鉄を使用して瓢型花瓶の再現を実施していく。たたら製法で作られた直径300㎜、厚さ2㎜の和鉄を入手が出来たこと、純銀での再現実験から特殊な金鎚と専用の当金（打ち出しの際に使用する、鉄製の支持体）を開発できたことにより、製作に関わる道具が整った。和鉄での再現実験の前に、炭素量が極めて少ない鉄にて予備実験をおこなう。その際の知見から、もう一度製作に関わる道具や製作工程を検討して、和鉄での再現研究を実施していく。再現工程中には、3Dデータから製作したプロトタイプを活用して、形状をオリジナル作品に合わせていく。完成後、再現品を3Dスキャナーで形状を読み取り、オリジナル作品と比較検討を実施する。
製作面以外の資料調査も引き続き実施し、鉄打ち出し技法の再現に関わる情報収集をおこない、山田宗美の作品調査も進めていく。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究を延長したため。
今年度の助成金では、鉄（SPCE・深絞り用）とアセトンなどの薬品を購入する。
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