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2018 年度 実施状況報告書

「分都型文化政策」の背景と構造に関する国際比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K00216
研究機関獨協大学

研究代表者

秋野 有紀  獨協大学, 外国語学部, 准教授 (30708590)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード文化政策 / ドイツ / 分都 / 連邦制 / 国と地方の協働 / 地方分権 / 州の文化高権 / 首都機能移転
研究実績の概要

文化政策研究ではこれまで、各国の文化政策は大まかに「中央集権型」「地方分権型」「民間支援重視型」の3タイプに分類されてきた。本研究はこの分類を批判的に再検証することで、2021年に文化庁の京都全面移転が決定されている日本の東京・京都「分都型文化政策」の参照例とすることを目的としている。
本年は考察事例の一つとして「地方分権型文化政策の代表」とされてきたドイツを中心に以下の3点を検討した。ドイツも近年はもはや、州を中心とした地方分権型ではなく国家・地方の「協働型」に近く、円滑な協働のあり方を模索し続けている。さらには、1998年以降の文化政策は、ボン・ベルリン「分都型」を採用している。
① 国政レベル(連邦政府)の文化政策と地域レベルの文化政策は、近年どのような転換期を迎えているのか。→1998年に連邦政府レベルの文化担当官、2000年代初頭に州との連携を重視した連邦文化財団が設置された。この頃より、州と国との協働のあり方が中心的に議論され、2018年にはこれまで教育政策の傘下にあった州文化大臣会議が、教育からの独自性を強める組織改編を行っている。
② 地域分権(主権)型の代表格となった歴史的・思想的背景。→ナチ時代の反省から、戦後の地方分権型に向かったことは、これまでも明らかにされていた。しかし、ナチ時代以前の近代国家形成過程における文化と分権と集権との拮抗への着目、ヴァイマル憲法成立前後の地方による主権に関する主張については不明点が多かったため、連邦文書館資料をもとにこの経緯を議事録に基づき、分析した。
③ 加えて、1998年の国の文化政策開始に向けた所管や官庁の移管についてもある程度まで文献資料で明らかになった。移転の手法、現在の協働の仕組みは、一般行政分野についての基礎的な情報を得たが、文化政策についての詳細は、次年度以降の課題である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

文書館の資料のみならず、芸術組織を統括する財団の資料室や自治体の資料室所有の資料など、限られた滞在時間で多くの資料を提供していただくことができた。それらの分析も今年度は順に進めることができ、年度末にはほとんどのデータを分析し終えることができた為、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

当初、分都型として韓国も事例にすることを考えていたが、日本の場合は基本的に「分都」ではなく全面移転を予定していることが発表されている。そのため、他の省庁との連携の面では分都型(京都・東京の連絡・連携の参照として)が参考になるとしても、文化政策自体に関しては、まずは、今後のモデルが地方分権であるか首都機能の部分移転に留まるのかは別として、地方創生という大枠の目標を見据えるならば、連邦制の国の国・地方の連携制度を明らかにする方が、有益であると考えた。
そのため、次年度は、ドイツに関して残した移管と現代の連携の構造を明らかにするとともに、米国における文化政策をドイツと比較しつつ、連携という側面から考察したい。その際、米国は民間主導の伝統があることを踏まえ、芸術文化団体の活動の質、住民への浸透度もドイツとは異なる現状があると考えられるため、そうした活動も観察しつつ、政府の活動が限定的ながらもどのような点に求められてきたのか、地方政府との連携はどのようになっているのか、そして民間あるいは公共的な文化協会や芸術家・団体の連盟との協働は政府とどのような関係にあるのかも、次年度はドイツと日本と比較しつつ、まずは調査に着手し、徐々に明らかにしたい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] ドイツにおける芸術文化領域関連のダイバーシティ政策・事業の現状について2019

    • 著者名/発表者名
      秋野有紀
    • 雑誌名

      『文化庁平成30年度文化行政調査研究 ダイバーシティと文化政策に関するレポート』

      巻: ― ページ: 未定

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ドイツ2019

    • 著者名/発表者名
      秋野有紀
    • 雑誌名

      『文化庁平成30年度文化行政調査研究委託業務 平成30年度諸外国における文化政策等の比較調査研究事業報告書・ビジュアル版』

      巻: ― ページ: 未定

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ドイツ2019

    • 著者名/発表者名
      秋野有紀
    • 雑誌名

      『文化庁平成30年度文化行政調査研究委託業務 平成30年度諸外国における文化政策等の比較調査研究事業報告書・概要版』

      巻: ー ページ: 未定

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Die Kulturpolitik Japans am Wendepunkt2018

    • 著者名/発表者名
      YUKI AKINO
    • 雑誌名

      Fachzeitschrift Kulturpolitische Mitteilungen

      巻: 161/II ページ: 41-42

    • 国際共著
  • [雑誌論文] 第4章 ドイツ2018

    • 著者名/発表者名
      秋野有紀
    • 雑誌名

      文化庁地域文化創成本部事務局総括・政策研究グループ『平成29年度諸外国における文化政策等の比較調査研究事業報告書』

      巻: ― ページ: 77-109

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 転換期にある日本の文化政策を考える ~5か国との比較から~2019

    • 著者名/発表者名
      秋野有紀(総括議論は朝倉由希・菅野幸子・長嶋由紀子・閔鎭京と共に)
    • 学会等名
      アーツアカデミー東京芸術劇場プロフェッショナル人材養成研修レクチャーシリーズ<文化政策編>(第三回)
    • 招待講演
  • [学会発表] 文化政策の諸外国調査から考える日本の文化政策への示唆2018

    • 著者名/発表者名
      秋野有紀(朝倉由希・菅野幸子・長嶋由紀子・閔鎭京と共に・討論者として藤野一夫神戸大学大学院教授)
    • 学会等名
      日本文化政策学会
  • [図書] 文化国家と「文化的生存配慮」 ドイツにおける文化政策の理論的基盤とミュージアムの役割2019

    • 著者名/発表者名
      秋野有紀
    • 総ページ数
      408
    • 出版者
      美学出版
    • ISBN
      978-4-902078-54-1
  • [図書] Forschungsfeld Kulturpolitik - eine Kartierung von Theorie und Praxis. (担当箇所:Yuki Akino:Why studying German cultural policies as an essential value for individuals and society is important: A comparative study of Germany and Japan 国際共著)2019

    • 著者名/発表者名
      Gad, Daniel/Schroeck, Katharina M./Weigl, Aron (Hg.)
    • 総ページ数
      400(予定・掲載確定済)
    • 出版者
      Georg Olms (Hildesheim/Zuerich/New York)
    • ISBN
      NN

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公開日: 2019-12-27  

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