研究課題/領域番号 |
18K00216
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
秋野 有紀 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (30708590)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドイツの文化政策 / 米国の文化政策 / コロナ禍と芸術支援 / 分都 / 政府機関の地方移転 / 連邦制 / 文化庁 / 構造転換 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、文化政策研究において国際的に使用されてきた3種類の分類(「中央集権型」「地方分権型」「民間主導型」)を批判的に再検証することにある。それにより、政府機関の地方移転(とりわけ文化庁の京都への全面移転)を進め、政策の機能強化を目指している今日の日本の文化政策の参照軸を得たい。 本年度は、ドイツに関しては、連邦政府の文化政策の制度変更の実情と連携のあり方を文献・文書資料によって明らかにした。米国に関しては、すでに前年度に収集していた一次資料の分析を続けた。 ドイツの現代の実情と連携とを考察する部分においては、コロナ感染症拡大防止のために、劇場・ミュージアムなどの文化機関の閉鎖が行われ、新しいタイプの支援措置が次々になされたという事情が、研究内容にも影響を与えた。申請当時に見通していた歴史上の反省に基づく制度変更、現代の社会的課題に対応するために制度的変更のうち、後者に該当する変更事例が、多く見られたためである。それらには、予算措置など、時限的と見なせる変更もあった。しかし、コロナ感染症拡大防止に伴って必要となった芸術家への支援を理由に、長年の懸案であった連邦政府の文化政策の「関与の拡大」と州政府との「連携」とが一気に進められた。 この点で、ドイツの文化政策の構造転換をこの時点として今後振り返る画期となるような政策の変容があったことは看過できない。ドイツの連邦政府の文化政策の歴史は、第二次大戦後、20年あまりしか経っていないが、これまでの国立博物館の設置、芸術家社会保険の創設、連邦文化基金の設置と並んで現在の政策変更が、大きな構造の変化をもたらしうるために、今年度の分析は、ここ数年のアクチュアルな政策対応を対象として連日発表される政府機関の資料やドイツの報道記事が主な対象となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、海外渡航制限のため、申請時に予定していた国外での実地調査は行えなかった。けれども、前年度に収集した一次資料の分析をさらに進め、今後の海外調査の準備をより厳密に行えたこと、アクチュアルな政策対応を観察する際に、時事を追うことと並行して、これまでに扱ってきた政策や措置の歴史的経緯などについて各国の新聞報道などから新たに得られた有益な情報もあったため、総合的にはおおむね順調に進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまでと同様に、アクチュアルな社会課題を反映させつつ、事例紹介にとどまらず、歴史の文脈や理論研究において、現代の政策が何を意味するのか、どのような位置づけとなるのかという分析を行いながら、研究を進める。
次年度が最終年度となるため、研究をまとめ、総合的な形で発表していく準備をしてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大による海外渡航制限のため、国外での実地調査を次年度以降に実施する点で、計画変更を行ったため。
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