研究課題/領域番号 |
18K00217
|
研究機関 | 女子美術大学 |
研究代表者 |
宮島 弘道 女子美術大学, 芸術学部, 教授(移行) (40710299)
|
研究分担者 |
橋本 信 (橋本弘安) 女子美術大学, その他部局等, 研究員(移行) (30189485)
岸野 香 女子美術大学, 芸術学部, 教授(移行) (80282812)
稲田 亜紀子 女子美術大学, 芸術学部, 准教授(移行) (90307091)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 天然無機顔料の新たな可能性 / 近代日本画作品の顔料研究 / 天然鉱物のサブミクロン化技術の蓄積 / 天然鉱物のサブミクロン顔料の国際展開 |
研究実績の概要 |
令和元年度においては、大阪大学接合科学研究所の内藤教授との共同研究によりブレイクダウンによる粉砕粒子径の現時点での限界点が200nm付近であることが推察されたことから、日本画画材店「喜屋」より入手した天然岩絵具白群を200nm付近の粒子にまで粉砕を依頼(株式会社アシザワ・ファインテック)、そのナノ粒子顔料を元に様々な展開と試みた。 ・2019年6月14日 島津テクノリサーチに依頼して、菱田春草まくり作品「嵐の海」の青色彩色部分の成分分析を行い、プルシアンブルーの使用の可能性が認められた。この件については今後、本学内での更なる考察が必要であるが、いずれにしても今回のナノ粒子顔料を用いた「嵐の海」の模写の作成も完成しており、歴史的絵画との比較展示をすることでナノ粒子顔料の特質と可能性については検証可能と考える。また同時進行で、「嵐の海」の表装を飯田市美術館の依頼を受けるかたちで行い本年度中に完成させることができた。 ・2019年9月2日タイ・バンコクのシラパコーン大学を訪問、タイ画を専攻する学生10名に依頼して、サブミクロンナノ粒子を用いて、タイ画で用いる白土の規定材に自由に描いてもらいその感想を調査した。更に9月6日にはタイ・チェンマイのチェンマイ大学を訪問、日本画のワークショップ内で、大学関係者及び地元教育機関の教員向けにもサブミクロン・ナノ粒子顔料を使用したサンプル作品の制作を依頼し、これらを回収し帰国した。 ・本学を訪れた上海交通大学の中国画を専門とする先生方にもサブミクロン・ナノ顔料を提供し、試作を依頼した。来年度中に郵送いただくよう依頼した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、時間を費やした、アズライト(天然岩絵具白群)のサブミクロン粒子化も大阪大学接合科学研究所の内藤教授との共同研究により、現在の技術的限界点を見極め、応用研究へ踏み出したことで、計画の遅れを7割ほど取り戻した。しかし、サブミクロン・ナノ粒子の和紙への応用研究の部分において、兵庫県西宮市名塩の間に合い紙の紙漉工房への研究協力の依頼が行われておらず、早急に対処する必要がある。和紙に顔料を漉き込む伝統技術に応用する試みで、サブミクロン・ナノ粒子の様々な分野への応用・展開を中心に据えている本研究において重要な部分を占める応用研究である。また、学内の日本画教員への研究作品依頼と自身の作品制作も同時に期日を早める必要を感じている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度のため、成果発表展示を控えており(2020年11月~12月)そのための準備が中心になる。女子美術大学内展示スペース「space1900」での展示を予定している。会場の確保、会場の陳列什器の手配、会場演出など小規模ながら充実した展示にするため早めの行動が重要になる。 昨年度までに行う予定だった間に合い紙への応用研究は是非早めに行いたいと考えている。しかし、コロナ禍にある現在において、行動が規制されていることは非常に痛手である。自身の作品も長野県に収納されており取りに帰ることもままならぬ状態のため、規模を縮小せざるを得ないことも念頭に準備する必要がある。 アズライトのサブミクロン・ナノ粒子の科学的検証についても、本学内において色彩学専門の坂田教授の知見に基づき検証を進めていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
タイへの旅費について共同研究費による支出をおこなったことと、自己負担などにより予算を消化していなかった。2020年度において、展示の準備と展示期間中の会場警備人件費に充てたいと考えている。
|