研究課題/領域番号 |
18K00219
|
研究機関 | 文化学園大学 |
研究代表者 |
柴田 眞美 文化学園大学, 造形学部, 教授 (10260978)
|
研究分担者 |
杉田 秀二郎 文化学園大学, 国際文化学部, 教授 (70350204)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 日本画 / 臨床美術 / 心理尺度 / 心理学的質的分析 |
研究実績の概要 |
大自然に対する畏敬の念を有する「日本画」と、人間の根源的な創作表現の喜びを重んじる「臨床美術」を融合した新たな創作実践を開発するという本研究の目的に照らし行なった、いくつかの初学者対象の創作実践及び心理学的振り返りアンケートについて、結果の分析を進めた。第1回目の調査に引き続き、創作実践体験前後の心理学的変化をつかむべく心理尺度アンケートを行った第2回目の調査結果についての分析を進めている。 本年度はデジタル機器に振り回される状況の中で(COVID-19の影響)、手間暇のかかる日本画の画材を用い、視覚以外の、触覚、聴覚、味覚、嗅覚、さらには異次元的でさえある「気配」のようなものをも重要視し、論理的世界に縛られる事なく「感性を解放する」ダイレクトな感性の表出を目指す「臨床美術」的なアナログ世界が、人間性の回復にとって重要な営みであるという実感を得た事は、はからずも本研究で目指す美術の意義と重なる。 これまでに得られたデータの分析結果を受けての新たなアンケート調査(美術家でかつ臨床美術に携わる専門家対象;柴田担当、一般社会人対象;杉田担当)の実施や、できうる限り対面で実施したい海外の研究者との創作実践は思うようにはかどってはいない。 しかしながら、開発する「日本画と臨床美術を融合した創作実践」プログラムで使用不可欠な日本画の岩絵具がたとえ入手困難な環境にあっても、身近な土や石などを砕いて制作することを可能にするキットを入手することが出来、身近な材料で試してみることにより、開発プログラムを広く紹介するためには大変有用であることが実践的に確かめられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の長引く影響のため、慣れないオンライン授業等に振り回される年度であったが、遅々とではあるがデータの読み込みを継続した(作例及び自由記述部分:柴田担当、創作実践前後の心理尺度の比較検討:杉田担当)。その結果に基づいた追加アンケート調査と海外の研究者との対面実施を前提としたコンタクトを実現することがかなっていない。(しかしながら、そのようなデジタル機器に浸らざるを得ない環境の中で、手間暇のかかる、そして心とじっくりと向き合うアナログ世界の美術の意義をあらためて実感できた事と、本研究により開発する美術プログラムの普及に際して、身近な材料を岩絵具様に加工するキットを入手できた事は収穫であった。)
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間延長願いを提出し、引き続き、得られた作例及び自由記述部分の分析(柴田)、心理尺度の量的分析(杉田)を行う。アンケート調査の追加(美術作家である臨床美術士:柴田担当、一般社会人:杉田担当)及び、結果の構造化(柴田・杉田)を目指す。また、これまで得られた結果を参考としつつ、でるだけ本格的な日本画材料を用いての、臨床美術的手法を取り入れた、初学者対象の創作プログラムを実践する。COVID-19の影響が今後どのように推移するか予断を許さないが、状況を見つつ海外の研究者とのコンタクトを実現できることを願っている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、これまで得られたデータ分析結果のまとめ及び、その結果を受けてバージョンアップさせたアンケート調査へ進むことが困難であった。また、海外の研究者との対面による美術プログラムの実践も未だ果たせていない。 COVID-19の影響が思いの外長引き予断を許さない状況であるが、上記の計画の遂行、本格的な日本画の画材を用いた、創作実践の開発実行を実現させたい。
|