研究課題
本年度は、今後の研究への継続性を考え、これまで使用してきた自律神経機能測定装置であるチェックマイハートが、製造中止になったため、新たな自律神経機能測定装置であるMy Beatを導入してチェックマイハートとの整合性を確認した。その結果、チェックマイハートとMy Beatは同様の測定機能があると見なせた。これにより、今後の自律神経機能の測定はMy Beatを使って行うことが可能となった。音楽療法は、認知症の予防と改善に心理的・社会的側面から効果があるとされている。また、軽度負荷運動と認知課題を同時にする二重課題も効果があるとされている。本研究では、高齢者において、簡便なプログラムで構成された歌唱を伴う歩行による二重課題の心理的影響を明らかにすることを目的とした。歌唱を伴う歩行は、副交感神経指標に上昇傾向がみられ、「怒り・敵意」「混乱・当惑」「抑うつ・落ち込み」「疲労・無気力」「緊張・不安」「友好」の6つの気分が改善し、認知機能も保たれていた。歌唱のみの単課題と計算を伴う歩行の二重課題は、自律神経活動に有意な変化はなかったが、「友好」の気分に改善がみられ、「活気・活力」は改善傾向がみられ、認知機能も保たれていた。一方、計算を伴う歩行の二重課題は、自律神経活動に有意な変化はなく気分の変化もなかったが、認知機能は保たれていた。以上から、歌唱を伴う歩行である二重課題は、歌唱のみの単課題や計算を伴う歩行である二重課題に比べて心理的に負荷が少なく、自律神経の変化からリラクゼーション効果を有する可能性が示唆された。今後、安定した自律神経機能の測定機器により、より多くの認知症予防の対象者および軽度認知症と言われる方々を対象に音楽を使った様々な運動課題での二重課題の研究を継続していきたい。