研究課題/領域番号 |
18K00223
|
研究機関 | 名古屋女子大学 |
研究代表者 |
堀 祥子 名古屋女子大学, 文学部, 講師 (40626230)
|
研究分担者 |
水野 友有 中部学院大学, 教育学部, 准教授 (60397586)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 対話による造形表現活動の充実 / 造形的視覚教材 / 地域資源への着眼 / 地域社会における発達支援 / アートワークショップ |
研究実績の概要 |
幼児教育の5領域のうち、〈人間関係、環境、表現〉とアートを関連させた対話型コンテンツの開発と実践を行った。地域社会に暮らす親子を対象とした実践を①8/7に岐阜、②8/18に愛知で行なった。その内容は、インスタントカメラ(以下カメラとする)をデジタルとアナログをつなぐ造形的視覚教材として位置付け、それを用いた表現活動および鑑賞活動をコンテンツ化して実践した。研究者は参加者と関わりながら実践を進めた。 ①は、着地型観光イベント「長良川おんぱく」で実践した。母子3組が参加、子は全員4歳児であり初対面同士であった。保護者に活動の趣旨やカメラ取扱いの説明、活動中の安全面への配慮をお願いした。子どもたちは自ら、興味を持った地域資源とも呼べる景観を10枚ほど撮影した。その中から選んだ数枚を簡易写真額に配置する組写真を制作した。その後は研究者と参加者らとで相互鑑賞の時間を取った。 ②は、愛知県内の大学で開催された「あいちワークショップギャザリング」にて実践した。対象者は未就学・就学児および保護者で述べ70名の参加があった。内容は視覚玩具のソーマトロープであり、通常は絵で表現するところをインスタントカメラで撮影した静止画で制作した。方法とカメラの取扱いを説明し、撮影ブースにて参加者同士が互いに写真を撮った後にソーマトロープに仕立てた。動きを動画撮影し電子黒板で映し出すことで、参加者と研究者がともに鑑賞し成果を共有した。 カメラ本体への興味や対象を撮影する姿からは、子どもらが主体的に環境や人間関係および表現に関わる様子が伺えた。他者との対話によって対象への興味関心を広げながら、表現活動に取り組むことで「より深い学びを経験する場」、及び発達における「足場かけの場」として機能した。その活動に寄り添う保護者間、および保護者と研究者間の対話も盛んであり「ソーシャルスキルを培う場」としての役割も担った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、幼児教育の5領域のうち、〈人間関係、環境、表現〉とアートを関連させた対話コンテンツの開発と実践を行った。研究課題のタイトルにある、対話型コンテンツの開発と実践については,これまでに研究者らがフィールドとしてきた場を活用したこもあり順調である。しかし、それらを開催するための目印となる屋台型アートツールについては構想と設計の段階である。国内外の屋台の形状について情報収集を行っているが、形状や用途は多様性に富むものであった。研究者らの開発する対話型コンテンツに適合するデザインの検討および移動式とするための動力について課題があり、考案に思いがけす時間を要した。 また、実践した対話型コンテンツについて、写真や動画、アンケート等の記録物からの分析がまだ十分ではなく、アンケート紙の内容についても今後に向けて検討が必要である。加えて、国内で行われる地域大型芸術祭への参加については、先立ってロケーションの選定のための予備調査を行ったものの、エントリー期間や説明会の時期に代表研究者、共同研究者ともに重要な校務と重なったため、行うことが叶わなかった。今後は校務と参加する芸術祭の手続き時期とを再度照らし合わせて、適切な時期に行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの対話型コンテンツの開発と実践に並行して、2018年11月に岐阜にて、2019年2月には愛知にて、地域の食文化を題材にし、幼児の5領域〈健康、言葉、表現、人間関係〉に関連した予備調査およびアートコンテンツの試行をした。2019年度は計画時に予定した地域において、これらコンテンツ実施に向けてのエントリーや準備、実践、効果の検証を行う予定である。 2018年度の3つ目の実践として12/27に北九州の小倉市にある大學堂にて、身体性をテーマにしたトークセッションと毛糸などの繊維素材を用いたワークショップを開催した。研究者と共同研究者以外に、芸術認知科学、理学療法学、霊長類学者をゲストとして迎えてのトークセッションとなった。それぞれの知見から人間の身体性について語られることで、参加者である現地の大学に通う学生3名、社会人1名とも対話のきっかけともなった。手元に単純な作業である「指編み」を設定したことは、その場に居合わせた者たちの対話のきっかけとなった。また、参加者のその時々の興味の対象について、提供される話題と手元の作業の間を行き来することが可能であったことは、初対面同士の参加者でもその場に居合わせることへの抵抗感の軽減となったと考えられる。このことから、他領域の専門家との協働することは、計画の当初段階で予想していたよりも対話型コンテンツの充実に貢献できると考えられるため、より一層拡充していきたい。 2019年4月現在、研究実績の概要で述べた①の実践については、2019年5月に開催される第72回日本保育学会にてポスター発表形式で成果発表を行う。また、対話型コンテンツの開発については8月下旬に愛知県内および10月前半に岐阜県内で、地域社会に暮らす親子を対象としたアートワークショップ実施の計画とエントリー作業を進めている。同時に屋台型アートツールの実質化を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は対話型コンテンツの実践および実額後のアンケートや静止画や動画の記録物の分析に、学生アルバイトを導入する予定であったが、学生の予定および学事と重なったこともあり募集を行わなかった。 次年度において、当初の計画で使用する額と併用して、今年度末に実験的に行った実践から当該研究において有効性が期待される、対話型コンテンツの開発と実践の拡充のために他領域の研究者などを招聘を予定している。また、日本各地で行われる芸術祭および対話型コンテンツ開発のための美術館・博物館での調査を加速するために、繰り越した額を使用する予定である。
|