研究課題/領域番号 |
18K00223
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研究機関 | 名古屋女子大学 |
研究代表者 |
堀 祥子 名古屋女子大学, 文学部, 准教授 (40626230)
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研究分担者 |
水野 友有 中部学院大学, 教育学部, 准教授 (60397586)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 対話型アートワークショップ / 造形的視覚教材 / 地域資源の活用 / 地域社会でのコミュニケーション |
研究実績の概要 |
初年時に引き続き、幼児教育5領域の〈人間関係、環境、表現〉とアートを関連させた対話型コンテンツの開発と実践および屋台型アートツールの製作を行った。地域に暮らすおとなや子どもを主たる対象とした実践 を①8/23、8/24に愛知、②10/6に岐阜、③11/3に岐阜で行なった。 ①②では、昨年度より継続したテーマで活動した。内容は、インスタントカメラをデジタルとアナログをつなぐ造形的視覚教材として位置付けた前年度の研究を基に改良を加えた表現活動および鑑賞活動コンテンツを、地域の博物館や大学と協働して実践した。研究者は事前に協働先の関係者と打ち合わせした上で、当日は参加者と関わりながら実践を進めた。 ③では、地方自治体主催の企画に出展した。上記①②とは異なるコンテンツを新規に開発して実践を行った。開催地域の食材を取り扱う飲食店と研究者ら以外の専門家を数名招聘して協働した。不特定多数の来場者を地域内外から迎え、市営公園の開放的な少し非日常的な空間でBGMを背景に軽い飲食を伴いながら、来場者が興味を持った研究者や専門家とゆっくり対話を楽しむ仕掛けとした。 制作した屋台型アートツールは、②では受付台として参加者への目印の役割を、③では足を止めて立ち話が展開される縁側のような役割を果たしていた。 どの実践においても、参加者はコンテンツの内容を介して主体的に環境や人間関係および表現に関わる様子が前年度に増して伺えた。②③では他領域の専門家の参加により、幼児教育の5領域の特に人間関係について活発な活動となり、本研究における意義は大きいと考える。 参加者や研究者間で、対話や鑑賞によって他者への興味関心を広げ活動の成果を共有することが出来た。実践が「地域の中に深い学びを経験する場」および「コミュニケーションおよびソーシャルスキルを培う場」としての役割を担う可能性が伺えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、昨年度に開発した幼児教育の5領域のうち〈人間関係、環境、表現〉とアートを関連させた対話コンテンツの改良と実践を行った。前年度に引き続き、研究者らがフィールドとしてきた場の活用と並行して、新たなフィールドへの挑戦した。また、新規のコンテンツ開発では5領域のうち〈人間関係、健康〉を関連させ、実践の場そのものがアートにおけるインスタレーションのように振る舞うことが出来ており、順調である。 昨年度に課題であった屋台型アートツールについても構想と設計を経て制作に至り、実践に持ち出すことでその成果の考察も実現した。 同時に、2019年3月に瀬戸内地方にて、幼児の5領域〈健康、言葉、表現、人間関係〉に関連した予備調査およびアートコンテンツの試行をした。同年4月には滋賀において、本研究の成果を地域に開くための企画の予備調査と打ち合わせを行った。同年9月には東京にて一般企業等が手がけるワークショップスペースの視察を行った。 研究成果の発表として、前年度に行った実践の考察を2019年9月に第58回大学美術教育学会岐阜大会にてポスター発表した。会場では研究について多くの質問や意見が寄せられ、今後の研究への新たな視座を得ることが出来た。 国内で行われる地域大型芸術祭への参加については、昨年度にロケーションの選定のための予備調査を行ったものの、エントリー期間や説明会の時期に代表研究者、共同研究者ともに重要な校務と重なったため、行うことが叶わなかった。引き続き校務と参加する芸術祭の手続き時期とを再度照らし合わせて、適切な時期に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べた②の成果については、2020年5月に開催される日本保育学会第73回大会にて、③の成果については2020年9月に開催予定の第59回大学美術教育学会、①については2020年12月に開催予定の日本教育メディア学会2020年度第2回研究会にて発表予定である。2018年度に行った実践に端を発する他領域の専門家と協働で2019年度に行った実践では対話型コンテンツの充実が確認できた。 これまでの写真や動画、アンケート等の記録物からの分析から、今後は当初計画していたアンケート紙に加えてインタビューによる検証の必要を考えている。その準備や手順、方法を検討している。同時に今年度前半は、当初計画で実践を予定した地域でのコンテンツ実施に向けてエントリーや準備、実践により、これまで開発したコンテンツと屋台型アートツールの効果の検証を行う予定である。 2020年3月以降、Covid-19の世界的流行および2020年4月の緊急事態宣言発令により、学校の休校やイベントの自粛が相次いでいる。それに伴い本研究における計画および実際に進捗していた実践は全て中止および延期が決定している。幸いにも、大学の休校措置により研究者間ではオンラインによる授業の方策について意見交換がなされており、そのノウハウが蓄積しつつあるので、それを援用した新たな方法の実践のあり方を模索可能な状態である。 また、2019年に開催されたあいちトリエンナーレにおける展示や運営における問題や現在の政府が提言する「新しい生活様式」など、芸術活動を取り巻く社会情勢の変化は芸術家だけでなく取り巻く人々全てにアートとは何かを問いかけ、意識の変革をもたらすと考えている。 今後は、これまでの研究成果を論文等にまとめることと、上記の現代社会の動向と本研究の意義との相関等の新たな研究テーマも射程として本研究の進展に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた出張が重要な学務と重なり遂行できなかった。また、実行したワークショップの計画が、協働者との現場との打ち合わせの中で当初の予想と異なる運営方法となり、参加人数も限られたものとなったためアンケート件数も少なく、人件費や謝金が発生しなかった。次年度はアンケートと併用してインタビューを予定している。同時にワークショップへの他領域の専門家との協働も計画しており、有効に予算を執行できる見込みである。
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