研究課題/領域番号 |
18K00223
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研究機関 | 名古屋女子大学 |
研究代表者 |
堀 祥子 名古屋女子大学, 文学部, 准教授 (40626230)
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研究分担者 |
水野 友有 中部学院大学, 教育学部, 准教授 (60397586)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 対話型コンテンツ / アートワークショップ / 地域コミュニティ資本 / アートコミュニケーション |
研究実績の概要 |
最終年度に入り、初年次より開発してきた対話型コンテンツのワークショップを、地域の親子を対象に、屋台型アートツールの活用とともに実践した。2020年度の実践は4つ、①8/25岐阜市での子どもから一般成人対象のオンライン造形講座、②8/29刈谷市での親子対象の工作講座、③10/3岐阜市でのクラフトマーケットにおける造形教材のデモンストレーションおよび刺繍によるコミュニケーションの実験、④2021/2/27岐阜市での一般市民対象のオンラインまちあるき講座、である。 感染症流行により、これまでの対面による実践が難しい状況を踏まえて、開催の方法や工夫を模索する一年となった。しかし、この研究課題の掲げる「対話型コンテンツの開発」の点においては、研究者らの周辺にある地域コミュニティ資本を改めて見直し、オンラインや屋外での開催に向けた検討や、屋内においてもI C T機器を用いるなどの、新たな視座での着想や教材開発を行うことができている。 本研究課題において、これまでに協働した経緯がある他大学研究者や地域社会教育施設の協力もあり、開発したコンテンツの検証が実施できた。結果、社会の状況に合わせた「地域コミュニティ資本の活用」が、前年度に増して促進された結果となった。 実践①では地域の昆虫博物館と、昨年度の親子カメラワークショップから引き続き協働で開催した。コロナ感染症流行下で全国的に社会教育・文化施設は閉館や制限下での開館を余儀なくされた状況下であった。実践④では、①の開催に興味を持った他大学の地域科学専門の研究者からの申し出があり実現した。こちらも地域フィールドワーク活動に制限がある状況下での企画であった。どちらもこれまでの研究活動で信頼関係が築かれた間柄であり、オンラインでの実施に当たって打ち合わせ等に支障がなかったことが成果であった。また、遠方からの参加者の存在はこれまでにない特徴である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はコロナ感染症の流行により、年度始めには実践の計画を余儀なくされた。研究代表者および分担者は保育者教員養成校所属校であり、学生の学外保育・教育実習実施への配慮から所在地域外への移動制限があった。よって、開催予定であった奥能登芸術祭へのフィールドワークを兼ねた実践の中止、2022年開催予定の瀬戸内芸術祭への参加エントリーは、公務に支障をきたす可能性からの断念せざるを得ない状況となった。しかし、概要でも述べた通り、所属校の周辺地域において屋外の活動やオンライン実践等の方策の組み合わせによって実践の場の確保が可能となった。 昨年度得られた成果は2点であった。①対話や鑑賞によって他者への興味関心を広げ、活動の成果を共有することができた、②実践が「地域の中に深い学びを経験する場」および「コミュニケーションおよびソーシャルスキルを培う場」としての役割を担う可能性がある、である。これらが、参加者間および研究者と参加者間の双方向で行われた点に着目し、地域資源の活用や、表現および対話の面で分析し、2020年の5/15,16に開催された第73回日本保育学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は次年度が最終年度である。以上の内容およびこれまでの経過を2021年5月開催の第74回日本保育学会にて発表予定である。また、今年度の特徴であったオンラインと対面を併用する実践については、その効果の考察や有効性の検証、方法論等の研究を深める余地がある。それらも含めてこれまでの本研究課題の内容を総合的に検証し、論文化を試みる。 前年度の報告において、コロナ感染症流行が日本および世界の現代社会の情勢を変化させ、「人間の在り方」を問いかける機会となっている。これまでに水面下にあった問題や課題が顕在化され、解決に向けた意識の変革が求められていると考える。本研究課題の成果は、私たち一人一人が創造的に生き、より良い社会へと変革していくための方策を思索する基礎としたい。同時に、芸術表現活動が人々の思考にどのように作用するのかを実践を通して検証することでさらに進展させていくことを、次の新たな研究テーマとして取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に予定していた出張や実践企画が、コロナ感染症流行の影響で地域間を跨ぐ移動が制限されたため遂行できなかった。同様の理由で、関係者へのインタビューも進捗していない。また、計画したワークショップの実施方法が対面からオンラインへと切り替わったものについては参加人数が少ないなどの理由から人件費や謝金が発生しなかった。 次年度は学会での成果発表のエントリー費用や論文執筆および発表に関わる費用、今年度実施できなかった地方芸術祭への出張、コンテンツ開発の追加調査等で有効に予算を執行できる見込みである。
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