研究課題/領域番号 |
18K00226
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研究機関 | 大分県立芸術文化短期大学 |
研究代表者 |
山口 祥平 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 准教授 (60376910)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 現代美術 / 国際美術展 |
研究実績の概要 |
国際美術展ドクメンタは5年一度ドイツカッセル市で開催される世界でも著名な現代美術展のひとつである。本研究では、ドクメンタが世界有数の国際美術展として開催毎にその発信力を保持する理由に、本展が長きに渡り構築した独自の展覧会運営システムにあると仮定し、その仕組みを明らかにする。 とりわけ、本展における運営組織の編成過程を対象とし、その特徴を整理記述し、国内で隆盛するアートフェスティバルへの基礎研究として寄与することを目指している。平成30年度は、同展の運営プロセス調査を実施するにあたり、芸術監督の選出過程に焦点を当て調査研究を行う予定であった。当課題の設定に関しては、事前研究にて明らかになっていたものであり、5年に一度開催されるドクメンタ展が開催終了し、次回開催にむけ着手する準備業務において最重要プロセスのひとつである。しかし、後述するように前回開催時(2017年)の財政問題が後を引き、主催組織であるドクメンタ運営会社が問題対応に追われたため、展覧会運営の基点となる芸術監督選出が例年にない遅延を見せた。ゆえに、本研究でも芸術監督選出の調査に関しては次年度へと延期し、本年度は、既存の収集資料を元に、ドクメンタ展の全体像、ならびに過去においてメルクマールとなる展覧会の特徴を分析した。調査では、過去ドクメンタ展のカタログ(レプリカも含む)、ブックレットならびに同展創設者のアルノルト・ボーデ自伝等を中心に展覧会運営の流れを整理し、展覧会運営組織に関する貴重な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドクメンタ展の運営遅延により、芸術監督選出過程に関する調査が未着手となっているが、概ね順調に進展していると考えられる。ドクメンタは5年に一度開催され、直近開催として2017年に14回目が実施されている。通例であれば、翌年秋(2018年秋)には次回展覧会を統括する芸術監督(アーティスティックディレクター)を選出する時期となるが、2017年開催のドクメンタでは大幅な事業予算超過による財政問題が発生し、当該問題の対応に運営会社が追われたため、開催翌年度の重要アジェンダとなる次期芸術監督の選出が大幅に遅れる事態となった。芸術監督選出の遅延により、本研究での調査も合わせて延期することとなったが、今回の件を通して運営会社と芸術監督との間をめぐる責任所在と範囲も明らかになっている。そのため、次回の調査において両者の関係に関して研究進展が見込まれると考えている。第15回ドクメンタの芸術監督も2019年2月22日に無事に発表され、次回展覧会開催に向けた重要アジェンダも順調に進行している。次回の芸術監督は、アジア圏からの初選出であり、過去にない個人でなくグループによる監督となるため興味深い事例となっている。今後、芸術監督の選出過程についてさらに研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、先述した運営会社事情により未着手となっている芸術監督選出過程の調査を実施する。令和元年度は展覧会に関する資料調査ならびに新規発表となった芸術監督に関する調査も行ない、現地での運営会社担当スタッフへの聞き取り調査を実施する予定である。展覧会運営プロセスに関する研究成果を各種学会での発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、前年度の調査課題である芸術監督の選出プロセスに関して、対象となる運営会社の事情により時期芸術監督選出の遅延が発生し、合わせて現地調査も延期せざるを得なくなったためである。今後の使用計画としては、当初の調査課題である芸術監督選出を実施するとともにキュレーターチームの編成過程に関して夏季および冬季の2回に分けて現地調査を実施する予定である。前年度の調査により資料取得の必要が生じているため、別途物品費を計上することとなった。
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