2019 年度実施状況報告書

国際美術展「ドクメンタ」の運営システムに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号	18K00226
研究機関	大分県立芸術文化短期大学
研究代表者	山口祥平大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 准教授 (60376910)
研究期間 (年度)	2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード	現代美術 / 国際美術展
研究実績の概要	ドイツ・カッセル市で５年に一度開催される国際美術展ドクメンタの展覧会運営システムに関する調査研究として、２年目にあたる本年度も継続して同展における芸術監督の選考プロセスと組織編成の過程の調査にあたった。令和元年度は、次回ドクメンタ15の開催にむけた準備プロセスの２年目にあたり、例年では芸術監督の選出、実働にあたるキュレーターチームの編成、コアスタッフの編成に着手する時期である。しかし、前年度の会計トラブルを受けて、芸術監督選定に遅延が発生した。よって、本年度は初年度に予定していた芸術監督の選定過程および今後の運営スタッフ編成の初期過程に関する調査研究に着手した。芸術監督の選考過程に関しては、ドクメンタ運営会社が編成する「芸術監督選考委員会」のメンバー構成・プロフィールおよび委員コメントがドクメンタの公式ホームページで公開されるようになったため、現地調査に向けた事前準備に取り組むことができた。また、運営組織の編成過程に関しても、過去の2012年開催のドクメンタ13および2017年開催のドクメンタ14の運営組織構成の比較を行い、各部門における編成時期に関する現地での調査課題を整理し、本年度３月に予定した運営会社へのヒアリングに備えていた。しかしながら、現地調査を予定していた３月上旬には、ドイツでの新型コロナウィルスの感染拡大の初期にあたり、あわせて対象地域であるヘッセン州の治安悪化などの報道もあり、やむなく本年度の調査を見送ることとした。現地ヒアリングが延期となったため、上記調査に加えて、本年度は過去のカタログ資料運営プロセスの調査および、次回のドクメンタ15（2022年開催）における芸術監督であるインドネシアのアーティスト・コレクティヴ「ルアンルパ」に関する基礎調査を手掛け、次年度の現地ヒアリングに向けた準備作業に従事した。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 3: やや遅れている理由２年目にあたる本年度は運営法人への現地調査を主として事前準備を進めてきたが、上述したように世界的な新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、やむなく現地調査を延期した。しかしながら、想定よりも事前準備を進められたことに加え、ドクメンタ事務局におけるホームページでの積極的な情報発信がはじまったことで、国外からでも現地のプレスリリース情報を入手できるようになった。従来では、これらの運営情報は現地メディア（新聞・テレビ）で概略のみ知ることができる入手困難な情報であった。事務局の情報発信により、研究の進展が見られる一方で、さらなる課題も確認し、次年度の現地調査にむけた準備作業の一助となった。また過去の展覧会カタログ（ドクメンタ 12,ドクメンタ13, ドクメンタ14）における運営組織構成の比較を実施し、展覧会運営における共通部門の抽出を行ったことにより、現状の運営状況に関するヒアリングおよびアーカイヴ資料調査の準備をできた。上述のような研究成果を含めても、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、現地調査の延期を余儀なくされたため、研究の進捗を「やや遅れている」と判断した。
今後の研究の推進方策	最終年度である令和２年度においては、研究推進のため本課題において重要な現地調査を年度内早期に実施することが必要となる。しかしながら、新型コロナウィルスの影響はドイツでも未だ収束の見通しはなく、現地の運営法人もコロナ対策に追われている状況であり、展覧会の運営についても遅滞していることが想定される。次年度の研究推進方策に関しては、遠隔で推進可能なものに関しては可能なかぎり遠隔で実施し、現地で行うべきアーカイヴ資料に関する調査等に感染収束次第再開する予定である。国内外の収束状況や時期によっては、研究期間の変更も検討する。
次年度使用額が生じた理由	本年度に予定していたドイツ・カッセルでの現地調査が世界的な新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、やむなく延期となったため、旅費相当分の費用が次年度使用額として生じている。今後の使用計画としては、感染が収束し次第、現地調査の早期実施を予定している。