研究課題/領域番号 |
18K00228
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
並木 秀俊 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00535461)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 文化財 / 伝統技法 / 保存修復 / 截金 / 金箔 / ガラス |
研究実績の概要 |
30年度は資料の収集と調査に重点をおいて進めていった。先行してしまったが、中国での本研究に関わる招待講演の発表が重なり、敦煌莫高窟での約40窟の截金調査を行った。その中でも5窟からは截金と断定できる個所が確認でき、截金の歴史を辿る上で重要な成果となったと考える。これに加え、蘇州博物館の所蔵する截金作品についても触れることができ大きな成果となった。 他にも、研究を進めている中でイタリア・トリノの王宮博物館が所蔵するガラス作品に截金の存在を確認でき、残された跡から金箔の想定再現を行いコンピューターグラフィックスによる再現行った。この成果は王宮博物館に納める予定である。 また、関連する研究として金箔ガラスの技法について触れている。イタリアのブレシアのサンタ・ジューリア美術館が所蔵するメダルには、とても精巧な金箔のスクラッチング技法で描かれた肖像画があり、これについても合わせて調査を行った。 そして、本研究でこれまでに行った成果と先行研究をあわせロシアのエルミタージュ美術館で開催されたICOMガラス学会にて口頭発表(代理発表)を行った。自身で先行研究で行ってきた研究に、使用する道具・技法の詳細な動画やコンピューターグラフィックスを用いた割れてしまったガラス作品の再現を、ゴールドサンドイッチガラスから金箔ガラスまでに至る経緯と体系について語った。これまで、このような形で技法の側面から歴史に対してのアプローチは行われてきておらず、会場では大きな反響があった。この中で取り上げた作品にはエルミタージュ美術館所蔵のものもあり、今後の展開に向けて大きな一歩となったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたコンピューターグラフィックスによるアプローチの数が多く進められていないが、コンピューターグラフィックスによる研究の成果がとても有効で有用であることが実感できている。再現研究における3D技術なくてはならないものであり、特にガラスのような壊れやすいものにおいては、このような形データとして保存していくことが重要である。特にガラスの分野においては、世界中の美術館、博物館で研究者や学芸員が減っている状況であり、本研究の重要性をあらためて実感している。 本研究を通じて、多くの海外の研究者と連絡を取っている。30年度はいくつかの海外との機関と関係を持ち深めていっている。この截金という技法を多角的な見せ方でアピールできており、多くの研究者の興味を引いている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はコンピューターグラフィックスによる再現予定の作品を中心に進めていく。これまでの先行研究の成果に加え、新たな視点からのアプローチによって体系化に向けて徐々に固まりつつある。特にイタリアのターラント国立博物館所蔵「”Sandwich” cup made of transparent glass」などの細かな破片に分かれてしまっている作品ではこの取り組みが大きな成果があげられると考える。 また、金箔ガラスについてはブレシアのサンタ・ジューリア美術館の作品を中心にして、スクラッチング技法と截金技法を明快に分ける動画を作成して、イタリアでの学会発表を予定している。 メガラボウルの研究資料収集においては、大きく進めらていないのが現状である。やはり日本には研究者がいない上、海外に資料があることがあげられる。実際に現地に行き資料収集することとギリシャの研究者との連絡を取り研究の推進を図ろうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にイギリス・オックスフォード大学での発表が決まり、渡航費用が掛かることがわかりいくらかの金額を残し進めることとした。
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