本年度は最終年度となったこともあり、これまでの研究のまとめの年となった。海外のガラス研究における美術史、技法史において権威のある国際ガラス史学会(AIHV)では近年科学分析の調査の発表が最も多い。そんな中、本研究で進めてきた研究は美術史や技法史また考古学にも発展する内容であったため評価を受けたと考える。海外に限らず日本においても美術品における科学分析が多くなってきているが、本研究のような技術を伴った再現研究は海外でもあまり行われなくなってきている現状であり、ガラス分野における本研究は貴重な存在となるはずである。 特に、コンピューターグラフィック(CG)による想定復元は学会でも評価されており、脆弱でもろいため現状をとどめていない作品のあるべき姿が可視化できることは、今後の様々な研究に必要となるアプローチの技術になると考える。 また、コロナの影響もあり方向修正をしたため進めたフォトスキャンの技術も向上させることができた。これによってこれまで高度なCGの技術者でないと難しかったものを知識が少ないものでも使用することが可能になったことを確認できた。これにより、截金のような細かな装飾がどのような形で施されているのか、360度あらゆる角度から確認することができるので、より詳細な作品の記録がされると考える。 この金箔装飾技法の截金は海外では技術が途絶えたがゆえに、この技法を表現する言葉はない。本研究を通じて「kirikane」という言葉を用いて各国で発表してきたので、日本と海外を繋ぐ大きな役割果たすことができたと考える。研究期間中でなくなってしまったが、今年の6月に大英博物館での講演を予定しており、これまでの研究の成果を発表する予定である。
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