研究課題/領域番号 |
18K00229
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石田 美紀 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (70425007)
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研究分担者 |
Kim JoonYang 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (00749955)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 1990年代アニメ / 輸出 / 音声の現地化 / 多言語国家 / ファン / 受容 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、2019年8月5日から9月23日まで、シンガポールにおいて、1990年代におけるアニメ作品における音声の現地化とその受容についてのインタビュー調査と文献調査を行った。インタビュー対象者は、現地のアニメ・マンガ批評誌等に寄稿する批評家、アニメスタジオの経営者、日本の出版社の現地法人マンガ翻訳部門担当者、またアニメーション制作を学ぶ芸術大学の学生であった。 現地調査から、英語、中国語、マレー語、タミル語を公用語とする多言語国家シンガポール独自の音声の現地化の状況が判明した。人口の約75パーセントを中国系住民が占めているため、シンガポール独自の字幕制作や吹き替えが行われることは稀であり、台湾および香港で制作された中国語版が流通してきた。国家を超えたネットワークである中国語圏におけるアニメの受容は、2018年に調査を行った韓国では現地声優による韓国語吹替版が精力的に制作されてきたこととは対照的である。今後の課題として、多言語共同体と単一言語共同体における音声の現地化の比較分析が発見された。 9月13日にLASALLE College of the Artsにて、1990年代アニメにおける声の演出とその受容について講義を行い、その後シンガポール大学の日本大衆文化研究者と討議し、東南アジアにおけるアニメ受容に関する意見交換を行った。 当初計画においては、2019年度は中国語吹替版の発信地とみなされる台湾において調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため、渡航調査ができなかった。2020年度に改めて渡航を計画するか、オンラインでの調査の可能性を模索している。 研究分担者は、2018年度に引き続き、音声の現地化を含む韓国と日本のアニメスタジオで行われた合作実態解明について調査を行ない、シンガポールの事例との比較検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当研究は途中までは順調に進んでいた。そう判断する理由は、以下である。 第一の理由として、シンガポールにおいては、現地のアニメスタジオ経営者からファンにいたる幅広い層にインタビュー調査ができたことがあげられる。 第二の理由としては、2018年度の韓国での調査結果とは対象的な多言語国家における音声の現地化を明らかにすることで、国家を超えた言語ネットワークとアニメ受容という新しい課題を発見することができたことがあげられる。 しかし、一方で、新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、当初予定していた台湾での調査ができなかった。そのため、総合的に「やや遅れている」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は韓国、シンガポール、台湾の調査を総合し、調査地各地で交流したアニメ関係批評家・研究者を招聘して国際会議を行う予定である。しかしながら、2020年5月現在、新型コロナウイルスの感染拡大が継続しているため、計画の変更を余儀無くされると想定している。代替案としては、オンラインでの会議開催を検討している。 国際会議開催とは別に、研究分担者と共に、過去2年の研究成果を論文として発表することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月に台湾での調査を予定していたが、新型コロナウイルス拡大のため、実現できなかった。 2020年度も国外調査、及び海外研究者招聘は困難であると想定している。そのため、2020年度では、オンラインでのインタビュー対象者を増やすことを計画している。また、海外研究者招聘は、オンラインでの研究会開催に置き換える。その際の通訳及びインタビュー調査のテープ起こし謝金として、次年度使用額を充当し、オンラインでの研究を円滑に続行する計画である。
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