研究課題/領域番号 |
18K00231
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
西島 治樹 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (50413191)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | メディア芸術 / 保存と修復 |
研究実績の概要 |
メディアアート作品の保存修復は、歴史が浅いため、絵画や彫刻といった既存芸術が蓄積してきたような方法論が不足している。本研究は、デジタルテクノロジーを実装したメディアアート作品の保存と修復の可能性を検証するものである。初年度にあたる2018年度は、近い将来、管理者不在となることを想定したデータ保存の仕組みとして、複数の小型コンピュータにプログラムの一部を自動で分散保存する仕組みを考案した。これは2101年に作品が稼働することを約束するための最低限のデータ保存方法である。まだ完成には至っていない。保存可能期限をまずは10年に設定して、実現性の検証も並行して行った。また、デイジーチェーンによる信号伝達によって映像コンテンツの鑑賞を可能にする仕組みを試作し、新たなデータ保存方法の道筋を検討した。この映像コンテンツは、検証用保存ソースの一つとして今後継続使用する。また、この仕組みは、複数の映像コンテンツによって構成されたインスタレーション作品「地元論~たびのひと」のメインプログラムとして応用利用され、短期間の稼働チェックをクリアしている。この作品は、個展として国内公共美術館にて発表(2018年7月)、各種メディアに掲載された。 基礎的理解を深めることを目的に、中世、近代、現代に制作された既存の新旧芸術作品(電気仕掛け、コンピュータ制御作品を含む)の保存修復に関する調査研究(2018年9月)を行い、人為的修復による弊害および継続的な作品運用の事例、以上2点に関して、具体的な方策の素地を確認しており、次年度に繋がると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、メディアアート作品の物理的保存方法と作品を取り巻く社会環境の基礎調査に焦点を当てて研究を進める予定であったが、調査を進めていくうちに、プログラミングデータ管理の方法を同時に検証していくことの重要性に気づかされた。従って、1)物質としての保存、2)社会性における保存管理体制、に加えて、3)データ保存の初動研究も加わることとなった。また、欧州の調査地域にて交通アクシデントがあり、予定していた全てのフィールドワークを完了することができなかったこともあり、計画内容よりやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度は、データ保存に必要な物理的な初動実験および基礎調査を行った。次年度は、過去20年間実際に使用したメディアアート作品のコンピュータ本体の経年劣化、長期冷凍保存によるシュミレーション、バッテリー寿命、OSの稼働状況について、多角度的な検証作業を行う。また、物理的な問題点を拾い上げだけではなく、今後80年間、必要な維持管理・インフラの調査検証と、文化芸術の保存修復に関する社会のプラットフォームについて調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
追加で同時進行することとなったデータ保存の仕組み構築に関する研究が予定よりも時間を費やしたため、欧米・欧州の資料調査は延期となったが、今年度は当該繰り延べ額を充当する計画である。
|