研究課題/領域番号 |
18K00231
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
西島 治樹 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (50413191)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メディアアート / 保存 / 動態保存 / 民具 |
研究実績の概要 |
メディアアート作品の保存修復は、歴史が浅いため、絵画や彫刻といった既存芸術が蓄積してきたような方法が不足している。本研究は、デジタルテクノロジーを実装したメディアアート作品の保存と修復の可能性を(1)技術的方策(2)社会的制度の2つの側面から検証する。(1)技術的方策として、「冷凍」「素材」の2課題を検討している。昨年度から課題「素材」に着手しており、本年度は昨年度に引き続き、レーザー加工機と石材を用いた保存の方法を検討した。最適な保存方法には至っておらず、研究期間内は可能な限り試行を続ける予定である。(2)社会的制度としては、文化庁の保存に対する様々な取り組みがあるが、メディアアートに関しては歴史の浅さは否定できず、残念ながら十分とは言えない。既存の美術館、博物館におけるメディアアート作品の保存方法の実態については、「冷凍」的保存方法が多数であった。その場合、作品は死に至ることが多い。一方、民具の保存館を参考にしたところ、冷凍的な保存であっても、民具は冬眠のようであって、死に至ってはいなかった。ここから着想を得て、メディアアートの保存は、冷凍的な方法ではなく、冬眠的保存方法つまり動態保存が最適解ではないかという方針に至った。動態保存の場として、砺波市の博物館施設を準備し、運営のための法人を設立したところである。最終年度は、この場を活用し、メディアアートの最適な保存方法を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大のため、海外の美術館・博物館の視察を断念した。その代替案として研究対象とした展示施設の譲渡及び、その運営団体である法人設立のために時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度に引き続き、レーザー加工機と石材を用いた保存の方法を検討した。海外の先行事例を参考 最適な手段と思われる 新型コロナウイルスの流行により、海外の先行事例調査が困難となったため、海外調査主体の研究を断念し、国内調査に切り替えた。その結果、民具の保存施設から着想を得る機会を得た。民具の保存の場合、道具を使わずに保存する方法と、使い続けながら保存する方法がある。前者を凍結的保存、後者を冬眠的保存と呼ぶことにする。この冬眠的保存は、動態保存といっても良い。初年度にメディアアートの凍結的保存を試みたが、適しているとは考えにくい。これに対して、本年度は、動態保存を試みる場の確保を行なった。次年度は、この場を活用し、メディアアートに対する動態保存の有効性を検証する。メディアアートの動態保存を検証する場を確保し、その運営主体である法人を設立した。このハードウェアとソフトウェアを活用し、メディアアートの動態保存方法を検証する予定である。
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