研究課題/領域番号 |
18K00232
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
武末 裕子 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10636145)
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研究分担者 |
大内 進 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, その他部局等, 特任研究員 (40321591)
古屋 祥子 山梨県立大学, 人間福祉学部, 准教授 (50557824)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 触覚による美術鑑賞 / インクルーシブ教育 / 視覚障害 / イタリア / 地域連携 / 彫刻 |
研究実績の概要 |
本研究では国内外における触覚による鑑賞の実践事例を調査し、大学間・美術館と地域連携をはかりながら触覚鑑賞に理解ある土壌で地域を軸足とした世界水準の美術鑑賞ツールの開発と鑑賞法の提案を公共の場で行い、理論と実践の相互から、触れる美術鑑賞法の新たな可能性を明らかにすることを目的としている。 最終的に開発したツールは美術館や教育現場で随時活用し、改良を重ねて更なる普及につとめるため、初年度の本年では主に国内外事例調査とイタリアのアンテロス美術館とのツール開発の共同研究を中心におこなった。 今年度の研究実施計画に基づいて示す。 1. 国内外事例調査・分析 触覚による美術鑑賞ツール調査 (1)イタリアの事例調査 ①アンテロス美術館 ②触れる彫刻美術館国立オメロ美術館 ③その他美術館(ヴァチカン美術館、ウフィッツィ美術館、ドウ・オーモ美術館、マリノ・マリーニ美術館、テ離宮 他) (2)日本の事例調査 国立民族学博物館・京都国立近代美術館・兵庫県立美術館 他(国内の触覚教育に関連するイベントや企業企画調査含む) 調査により、日本国内での取り組みの加速とイタリアの活用例が今後の開発と活用の参考となる旨が明らかになった。 2.美術鑑賞ツールの開発実践 (1)山梨県立美術館所蔵作品の美術鑑賞ツールの開発実施(アンテロス美術館と共同制作)描かれている情報の取捨選択について日伊で協議しながら進めれられた。彫刻的な技法を用いて絵画をレリーフ化する手順が改めて明らかになった。 (2)触覚教材の素材研究 過去に代表者が作成した美術鑑賞ツールやアンテロス美術館作成のツールを用いて、素材を樹脂素材に変え、その強度や触感について検討した。 (3)「手でみるプロジェクト2018」の実施 文化庁の大学への助成を受けて実施したワークショップ・展覧会・講演会において上記の部分的な紹介を山梨県立美術館で行い意見を募った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に進展している理由は助成と協力体制にある。 先ず、助成については、当初本助成だけで検討されていた内容が、部分的にではあるが、文化庁の大学を活用した文化推進事業助成と相互に作用し、最終的な発表を行う予定である山梨県立美術館でその成果進捗の一端を展示や報告書で紹介することができた。これにより鑑賞者の育成や理解が深まり、日伊協力体制の強化にもつながってきた。 そして、イタリアのアンテロス美術館の協力により、山梨県立美術館所蔵作品の美術鑑賞ツールの開発実施(アンテロス美術館と共同制作)で描かれている情報の取捨選択についての日伊協議が深まった。そのため、続く年度での彫刻的な技法を用いて絵画をレリーフ化する手順検証がさらにスムーズに行うことができる。そして、日本での鑑賞法の検討にもイタリアでの協力体制により段階的に進むことが可能な状態となった。 既に要となる鑑賞ツール(レリーフ)作成は行われ、上記の点から、おおむね当初の予定通りに順調に進展していると述べることが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は事例調査・分析の続き、実践の反映をおこなう。 前半にイタリアのアンテロス美術館協力の山梨県立美術館所蔵作品の美術鑑賞ツール(アンテロス美術館と共同制作)を鑑賞法調査と共にツールを受け取り、日本での活用の検討(盲学校・視覚障がい者施設等において意見集約)の段階に入り、鑑賞法の考案を進めていく。また並行して、日伊の美術館調査 実見・実態調査を継続していく。昨年度に分担者が中心となって考案した調査案を実行に移し、分担者は日本の美術館調査を継続予定である。また、代表者はツール受け入れの際にイタリアとその周辺国での調査を継続する。 協力関係にある山梨県立美術館は鑑賞ツールの実践活用を目指して、ボランティアスタッフ等の人材育成の機会に準備を進め、進捗は相互に定例会で確認し合い、最終年度での公開と活用に向け進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国際協力でのツール作成の相互の意見集約と試作検証に時間と材料費が増額となり、その結果、鑑賞ツールの素材を含む物品購入額が予定より増加した。そのため、初年度は支出額を抑え、2年目の2019年度に購入費に計画的に補充した。 けれども、2019年度に共同研究の成果であるツールを前倒しで日本に持ち帰る事で、日本での視覚障害者への検証を丹念におこなう事が可能となり、成果発表と活用の準備(イタリア語翻訳と活用のための点字翻訳)を進めルため、使用額に変更が生じた。2020年度に予定している研究発表を含めた国際的な成果発表を充実させる予定で進めている。
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