釉薬組成をKNaO 0.200 mol、MgO 0.300 mol、CaO 0.500 mol、SiO2 1.75 mol、Al2O3 y mol (y=0.180~0.220) とし、釉薬溶融温度を1300 °C、結晶成長温度を1150°Cとして釉中にDiopside結晶を成長させた。Al2O3量yがDiopside結晶の生成に及ぼす影響を調べたところ、yが増加するにつれて、自然結晶(シード剤塗布位置以外での結晶)が多く析出した。これは釉薬のアルカリ成分の割合減少により釉薬の粘度が高くなり、釉中の気泡が釉から抜けきれず、気泡が結晶核として作用したためであると考えらる。yが0.180の時に、自然結晶が析出せずに、MgO結晶核を塗布した位置を中心としてDiopside結晶が放射状に成長した。Al2O3量yを0.180の場合、結晶成長保持時間を長くするにつれて結晶径が大きくなり、具体的には、5時間の時には1.2 cmであったが、9時間では3.2 cmまで大きくなり、美しいDiopside結晶が得られた。これは、結晶構成成分の拡散に対応しているためと考えられる。 Eu2O3を添加するにつれて結晶径が小さくなり、結晶成長が阻害された。1.0 mol%添加で結晶径は3.2 cm、10 mol%添加では1.1 cmとなった。また、 Eu2O3添加により、針状のDiopside結晶は細くなった。得られた各試料に紫外線(254 nm)を照射すると、施釉した部分全体が赤色発光したが、特に、Diopside結晶の中心部で強い赤色発光が確認された。これは、Eu3+イオンがDiopside結晶内に取り込まれて発光したためであると考えられる。一方、ガラス部でも弱い赤色発光が見られた。これは、添加したEu2O3がガラス部でEu3+イオンとなったためと考えられる。
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