最終年度は、仁智要録・三五要録全曲譜の演奏録音(全818トラック)と解説と論考を、出版の形で公開すべく、執筆作業やその他準備作業をおこなった。 録音については、2021年度までにすべて終了したが、音圧が小さいなど、一般に公開するには、少々難があった。そこで、すべての音源のマスタリング作業をおこなった。 各曲の解説および論考の執筆作業は、あまりに膨大な曲数のため、すべての曲譜の解説を完了するまでには至らなかったが、解説の一部を執筆し、また「只拍子と楽拍子それぞれの拍節構造の解釈」については、その考察の一部の成果を、著書『順次往生講式─平安後期・鎌倉期の管絃声歌つき講式の世界─』の第11章に収めた。平安後期~鎌倉期雅楽における、只拍子と楽拍子の概念について、これまで延もの(破の楽章に相当する)においては、楽と只で拍節構造が異なることを言及してきたが、今回、早もの(急の楽章に相当する)の只拍子と楽拍子の違いが拍節構造の違いはなくテンポの違いであることを指摘した。 今後1~2年の間に、仁智要録・三五要録の解読演奏を通して明らかになった、当時の拍節構造・テンポの問題、当時の音階の嗜好について、また奏法のい解釈などについて論攷としてまとめ、そして全曲の解説を完成させ、音源付き書籍として出版にこぎつけたい。それは研究書ではあるが、平安末期雅楽を感覚的に理解できる書として、ある種の事という体裁典 ─「平安末期雅楽 音の事典」(仮題)─ を考えている。
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