本研究はニューロダイバーシティの考察をもとに、人間の諸感覚統合の多様性に着目し、この多様性が生み出す世界像の相互作用をメディアアートとして展開する新しい芸術表現の確立を目指している。 ニューロダイバーシティのうち発達障害を中心に、障害者福祉施設などにて対面での調査やワークショップを計画していたが、新型コロナ感染症の影響で対面での研究継続が困難になったことから、対象を当初計画していた児童館に絞って、調査や展示などを実施することとした。 2021年度は愛知県の大型児童館である愛知県児童総合センターにて展示を実施した。同展示では、発達障害の当事者研究から得られた知見を元に開発した装置と、小学生の視点を組み合わせた展示を実施した。展示終了後は、展示で得られた作品体験者からのフィードバックと2018年度と2019年度に実施した障害者福祉施設での調査および特別支援学校で実施した授業への情報技術による補助を合わせ、ニューロダイバーシティの内、特に自閉症スペクトラムの創造性とメディアアートの関係性などについて調査を継続した。活動を継続する中で自閉症や幼児といった多様なコンディションの人たちの知覚する世界観を、健常と呼ばれるコンディションの成人が理解するための方法を探ってきた。そこで得たのが情報技術や造形技術などを用いて健常の成人とは異なる知覚を再現し、健常な成人が体験できるようにするという方法である。これらの活動は、言わば他者の経験を追体験する活動であり特殊な媒体あるいは道具を用いた他者の模倣であると考えられることから、模倣と創造の関係性を中心に考察を進めることができた。
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