研究課題/領域番号 |
18K00252
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
見上 公一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任講師 (60589836)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガスリー法 / フェニルケトン尿症 |
研究実績の概要 |
本研究は、平成29年度の科学研究費補助金研究活動スタート支援により調査を始めていた先天性代謝疾患の検査技術であるガスリー法の日本への導入に関する科学社会学研究を発展させ、1960年代後半から約40年にわたる期間を通じて関係者の協働の状況と環境の変化を記述することを目的としている。 1年目は、所属する大学で使用可能なデータベースなどを活用して国内におけるフェニルケトン尿症(PKU)という疾患やガスリー法に関する学術文献や関連する資料の収集を継続して行ったほか、インタビュー調査の実施に向けてその手法を精査し、学内の倫理審査委員会で承認を受けた。調査活動については前述の科研費で実施が予定されていた米国ニューヨーク州立大学バッファロー校におけるアーカイブ調査が10月まで延期されていたため、大幅な予定の変更を余儀なくされたが、米国アリゾナ州立大学のロバート・クック=ディーガン教授と英国エジンバラ大学のスティーブ・スターディ教授、そして本研究のアドバイザーである大阪大学の山中浩司教授を招いて公開のワークショップを開催し、過去の事例についての詳細な理解が医療の将来を検討する上でどのように役立つのかについて議論を行った。 また、収集済みの資料の予備的な分析も開始しており、1960年代において新聞に掲載されたPKU患者の親族による投稿が大きなきっかけとなり行政がその取り組みを開始したことが明らかとなった。今後、当時の政治・経済状況などを精査した上で、1960年代後半から1977年の新生児マス・スクリーニング制度の開始時点までに関与した関係者のモチベーションや相互的なインタラクションについて整理し、学術論文としてまとめる計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究に関連する調査を平成29年度の科学研究費補助金研究活動スタート支援を受けて開始していたが、調査訪問を予定していた米国ニューヨーク州立大学バッファロー校の図書館が大規模な改修工事のために急遽長期閉鎖されてしまい、実際に調査を行うのが今年度10月後半までずれ込んでしまった。このため本研究の調査活動を本格的に開始する時期も当初の予定より遅くなってしまったが、その期間を無駄にしないためにインタビュー調査の準備を進めたほか、ワークショップを開催することで今後の研究成果の発表方法などについても検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は今年度の遅れを取り戻すべく、更なる関連資料の収集とインタビュー調査を積極的に進め、その分析も順次行っていく。これまでの調査からも既に興味深い知見が得られている1960年代から70年代にかけての時期に焦点を絞る予定であるが、その後の状況との比較の必要もあることから80年代も視野に入れて進めていく。 年度末には専門学術誌に投稿する学術論文の草稿の準備を進め、可能であれば国内のアドバイザー4名と国外のアドバイザーであるボストン大学のダイアン・ポール教授を招聘して、その内容について議論する場を設ける。ポール教授の功績は医学史分野で重要な位置付けにあることを鑑み、その機会には国内研究者向けのセミナーの開催も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の開始前に予定をしていた米国ニューヨーク州立大学バッファロー校の図書館への調査訪問が今年度10月後半までずれ込んでしまったため、当初計画していた夏の国際学会への参加を取りやめたことから今年度の支出額が当初計画の半分程度となった。 来年度末あるいはその翌年度に国外のアドバイザーであるボストン大学ダイアン・ポール教授の招聘を計画しており、来年度予算として計上している調査活動および国際学会への参加費用は当初計画通りに執行し、今年度の未支出分をそのための予算として使用する予定である。
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