研究課題/領域番号 |
18K00253
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
飯田 香穂里 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (10589667)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 科学史 / 放射線 / 平和利用 / アイソトープ |
研究実績の概要 |
今年度は、特にトレーサー法(放射性アイソトープで目的の物質を標識し、放射線を指標に生体内代謝過程を動的に追跡する手法)に着目し、1950年代後半の国内におけるこの手法の利用について調べた。国外では、米国テキサス・メディカル・センター・ライブラリ所蔵のABCC資料、国内では、放射線影響研究所図書室や国会図書館等所蔵の関係資料を調査した。 被爆による健康影響を調べていた原爆傷害調査委員会(ABCC)は、1955年、広島にアイソトープ研究室を設置し、被爆者とその比較対照群を対象に、主に貧血について調べるため、放射性鉄・クロム、また、放射性コバルト標識のビタミンB12を用いてトレーサー検査・研究を行った。この研究は1959年までには打ち切られるが、その後も、ABCC以外の国内機関においては、同トレーサー法の利用が、被爆者以外の貧血患者等を対象に増加していく。 当時の日本では、放射線医学を1日でも早く取り入れ発展させることが重要視されていた。ABCCは、そのような日本側のニーズに着目し、アイソトープ研究を日本で行うことが日本でのABCCの立ち位置・関係性を改善する一手段であると考えていた。つまり、日本側の希望やニーズが、ABCCアイソトープ研究室設置の大きな動機の一つであり、被爆者のトレーサー研究に至った重要な要因の一つであると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査では貴重なデータを入手し、上記のような知見が得られた。これらは、国際学会で発表し、論文にまとめ国際雑誌に出版した。
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今後の研究の推進方策 |
平和利用の推進とリスクの議論が、どのように並行して行われたのか、また、どのような関係にあったのかについて、さらに調査を進めたい。今後は、国内だけでなく、国際的な場での発信と国内の議論の比較も行いたい。国内外の図書館やアーカイブズの利用は感染症の状況次第ではあるが、可能な範囲で資料調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額のため年度内に使い道がなかったが、次年度消耗品で使用予定である。
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