今年度は、1955年に開催された国連主催の原子力平和利用国際会議に着目した。この会議は、米国の「平和利用」キャンペーンにとって重要な役割を果たした。主催者側が放射線のリスクとベネフィットに関わる発表をあらかじめソートしたことが知られているが、詳細は不明である。今年度は、ニューヨークにある国連アーカイブズ所蔵のこの会議の準備資料文書を調査・分析した。どのような経緯・理由で個々の論文の可否を決めたのかは、原子力の「平和利用」と「軍事利用」の境界画定の観点からも大変興味深い。 日本から提出された放射線のリスクに関する論文のうち、「平和利用」には関係がないなどの理由から却下されたものがある一方で、却下されずに、他の複数の論文と一つの(平和利用に寄せたトーンの)アブストラクトにまとめられたものもある。これらがどのような経緯を追ってこのような扱いになったか、それに対し当該研究者やコミュニティはどのような反応をし、その論文は国内でその後どのように扱われたのかについては現在分析中である。今年度が最終年度であるため、これまでの成果を総合的に分析し、現在論文執筆中である。
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