1950年代の日本の「原子力の平和利用」としてもっとも注目されてきたものは、原子力発電であり、「平和利用」キャンペーンのもう一つの重要な柱とされている放射性アイソトープとその生物学・農学・医学的応用については、付随的にしか明らかにされてこなかった。本研究では、放射線のリスク研究と放射線の応用研究に同時に関わった医学・生物学系分野に着目した。放射線に関する知識には、リスク・害に関係するものとベネフィットに関係するものとあり、両者の関心の方向性は相反することが多い。両方の知の生産に関わった研究機関や研究者を分析することで、放射線に関する知の生産・伝達の複雑さについて理解を深めることに貢献した。
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