本研究は20世紀前半の中国における結核の流行状況、その社会経済的背景、対策および患者をめぐる社会関係を検討することを通して、近現代期の中国の政治・社会経済の変化の中における人々の生活と健康との関係の一端を解明することを目的とした。研究実施期間を通して、以下を明らかにした。(1)結核は都市部を中心に流行していたが、一部の農村でも問題化していた(2)農村での流行は都市との間の労働移動が原因の一つと考えられていた(3)30年代以降、都市では結核療養所や専門医院が作られたが、それらが全国的に普及するのは人民共和国建国以降だった(4)家族や友人といった近親者が療養において大きな役割を担った。
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