研究実績の概要 |
2018年度は、初期近代の医学学習に関する書籍出版の概要を把握するために、1750年までに出版された15点のラテン語医学書誌目録の調査を行なった。 16世紀以降多数の医学書が出版され、また出版された医学書の情報を集積した書誌目録も継続的に多くの著者によってまとめられていた。多くの目録は著者をアルファベット順に並べ、著者ごとに書籍のタイトルや出版年などの情報を記し、その記載内容や扱う主題を記していた。少数の医学書誌目録は主題別に書籍を分類していた。 1750年までに出版された主題別医学書誌目録4冊(Israek Soach, Nomenclator scriptorum medicorum(1591), Jan Antonides van der Linden, De scriptis medicis(1637), Martin Lipen, Bibliotheca realis medica(1679), Christoph Wilhelm Kestner, Bibliotheca medica(1746))において、医学学習に関する書籍がどのように扱われているかを調べたところ、最初の3冊では医学学習に関する書籍が「学習」「学習法」「読書の順序」という項目に分かれて記載され、残るKestnerではすべて「医学の方法書」という項目で50冊弱が記載されていた。 上記の結果から、初期近代において医学学習に関する書籍は単発で書かれたものではなく、一つの書籍ジャンルとして出版されていたことが示唆された。Kestnerが「医学の方法書」として列挙した書籍で言及される書籍を確認したところ、先行する「医学の方法書」に対する言及も多く、また複数の著者による「医学の方法書」が合冊出版されたことも確認できた。 以上により初期近代ではこれらの医学学習指南書が一ジャンルを形成していたという理解が得られた。
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