研究課題/領域番号 |
18K00266
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
宇仁 義和 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (00439895)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 毛皮養殖 / 副業 / 外来生物 / 地方文献 / 養狐 / 養狸 / 養兎 / ミンク養殖 |
研究実績の概要 |
2018年度は毛皮産業のうちキツネとタヌキ、ウサギなど戦前の中型獣、そして戦後の北海道のミンク養殖を中心に資料収集をおこない、事業者の分布と産業としての特徴を明らかにした。養狐は大半の事業者が北海道と樺太千島にあり、本州以南では群馬や福島など一部でごく少数の事業者に限られていた。それに対して養狸は全国に事業者が分布していたが粗密があり、事業者が多かったのは福島や新潟、京都や岡山などの一部地域に限られた。養狐は大規模で官庁や会社による企業的な経営だったのに比べ、養狸は副業的な営みであった。養兎は唯一府県統計に立項された毛皮養殖であり、産出の重要性が伺えた。戦前の毛皮獣養殖は軍需品であり、軍の関与やその主導という認識が見られるが、飼養家にすれば現金収入という動機が存在し、農林省や県が副業の推奨や支援をおこなっていた。戦前の段階では、上記3種以外の毛皮獣養殖は試験的であったり少数に留まっていた。 北海道のミンク養殖業は、既存の報告のとおり1950年代に北海道の主導で事業がはじまり、1960年前後に大手水産会社の参入で本格化した。養殖や販売事業者の資料によると、国内の販売網は統一されず数社が併存し、養殖業者もそれに系列化したことがわかった。 生態系への影響については、本州でも養狐事業者が集中していた地域では、外来個体の侵入の可能性があり、とくにタヌキでは優良とされた北海道産の個体の移入あるいは本州産個体を北海道に移送し北海道産と偽り本州に持ち込む事例があったとされ、タヌキでも遺伝子汚染の可能性が考えられた。 戦前の毛皮産業は資料が少ないが、副業という視点から新たな資料や情報が収集できること、事業者が地域の文筆家である場合は例外的に文書や文献などが残されることも発見であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
資料収集は予定どおりに進行し、成果発表も順調であるが、貴重書のスキャニング作業とデータベース入力が停滞している。これは作業予定者に学生を想定していたが、希望する学生との日程調整が上手くいかないことで作業が進展しなかった。新年度では新たに作業員の募集をおこないこの点は解消される見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
長く放置されてきた課題であり、学会誌などでの報告はほとんどない。他方、郷土史家による地方出版物での著作が一定数存在する。これらの地方文献について表現や典拠を改め、学術レベルの議論ができる形で発表することが本研究の目的のひとつである。これら地方文献はインターネットでの情報が少ないが、幸いなことに地方の図書館や教育委員会での協力が得られ資料収集は進展している。来年度は同様の作業を海外の関連資料についておこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、予定していた海外資料調査が未実施のため、そしてスキャニング作業をおこなわなかったことにある。これらについては来年度に実施する。
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