研究課題/領域番号 |
18K00266
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
宇仁 義和 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (00439895)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 毛皮獣 / オットセイ猟業 / ミンク養殖業 / 移入動物 / 外来種 |
研究実績の概要 |
農林省の毛皮獣行政 岩手と東京の毛皮獣養殖所と鳥獣実験場の跡地利用の実情を観察した。戦前の日本の毛皮養殖業の手本となったカナダでは毛皮養殖に関する博物館があるが、日本の場合は産業自体が消去されたような印象であるが、跡地も同様であった。また毛皮養殖業や移入種の利用を進めた渡瀬庄三郎の資料と関連の写真から一部であるが毛皮産業との接点を見つけることができた。 遠洋オットセイ猟業の資料収集 北海道、岩手、宮城、千葉、三重の各県で図書館資料、個人所蔵の文書の複写をおこなったほか、遭難碑や顕彰碑の場所を特定した。加えて自治体史や産業史に引用されている原典を明らかにした。原典のなかには所在不明なものや利用不能な保管状態のもの、地方の小規模な図書館や博物館で保管のものがあり、散逸を防止する観点からのこの漁業の全体を記述する必要性が感じられた。国外資料についてはアメリカとカナダのアーカイブを訪問し、複写と音声テープの書き起こしをおこなった。国内には残されていないと思われる戦前の資料、カナダの同業者は日本船の振る舞いを「害虫」のように見ていたことを知ることができた。ファウク社の資料も一定程度収集ができた。同社の先進的な技術は同族的秘密主義的経営ではなく、国営事業の委託会社としての地位と資金を用いた最新機器の導入や労働力の利用にあると考えられた。 北海道のミンク養殖業 釧路地方の資料館にミンク養殖業の写真と資料が保存されていることが判明し、関係者から話を聞くことができた。また函館近郊の元事業者からの聞き取りもおこなった。あわせて毛皮産業の業界紙や関係者の私家版書籍から関係者の氏名や所属の特定ができた。戦前の養狐事業の経験者が戦後のミンク養殖業の技術的指導者として活躍していた。 毛皮関連文献コレクション「寺田資料」の整理 戦前の論文やパンフレット、外国語文献のデータベースへの入力を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
もっとも遅れているのは毛皮関連文献コレクション「寺田資料」のデータベースへの入力である。学生アルバイトによっているが、古い活字や外国語のために入力作業が学生単独では困難で、研究代表者がなかば付きっ切りでの対応が必要となるため、アルバイト自体を減らしてしまったことによる。また、ドイツ語文献のスキャニングも技術的な課題が解決できずにいる。こちらは異なるスキャナを別に購入しており、今後の作業に期待したい。 国外資料の収集ではスウェーデンの資料保持者との連絡が取れずにいるため、訪問を次年度にしたことが作業進展遅れの原因である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルスの影響1学生アルバイトの遅延 他の課題と同様にコロナウイルスの影響が懸念される。ひとつは学生アルバイトが少なくとも2020年度前期はできないことである。対面授業が可能となる後期に集中した入力作業を実施することができれば解決が可能と思われる。 コロナウイルスの影響2国外調査の困難 1-2年目で実施予定だった国外調査が未遂に終わったこともあり、3年目に国外調査が集中する。行き先は、北米、欧州、ロシアであるがいずれもコロナウイルスの影響が長引く可能性が高く、出入国時の対応もあり、来年度の調査は困難になると予想される。調査を国内に限定した場合、解明ができずに課題の積み残しが発生するが、調査期間が延長不可であれば不完全であるが国内調査を充実させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最大の理由は当該年度に予定の国外調査を実施しなかったことによる。資料収集が目的の調査であるので、知見を蓄積を増やしてから調査を実施したくなり、国外旅行が後年度となってしまったことによる。もう一つの理由は学生アルバイトが予定よりも少なくなったことである。理由はすでに記したとおり、学生アルバイトの遂行に研究代表者の労力が予想以上に必要だったことによる。いずれも未遂分は次年度に実施したいが、コロナウイルスの影響により国外調査は国内調査に切り替えることや文献購入に充てることがあるかも知れない。可能であれば国外調査については実施時期を1年延長して完全に履行したい。
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