近代日本の毛皮産業の上流側にあたる捕獲養殖部門について、省庁や公的機関の報告書、事業者の作成資料、業界紙などの刊行物や写真から記録を収集し、事業展開の牽引力に注目して分析した。日本の毛皮産業を牽引したのは、年代順に自国資源の排他的利用、農業不適地での産業創出、農村の副業と軍需の利害一致、戦後の地方産業育成など様々であった。これらは、毛皮の利用や使用の拡大を目指したものではなく、換金収入が目的であった。反面、国内に毛皮の良さや文化的価値を普及しようとする動きは一部に見られたものの上流部門全体としては弱かった。
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