研究課題
基盤研究(C)
本研究では、「種痘」(天然痘という感染症に対する予防接種)の有用性とリスクが、各時代区分において、医療者や為政者によりどのように評価されていたか、その変遷を明らかにした。「種痘」は、18世紀半ばに日本列島に紹介され、明治期以降は国家の衛生政策の一環として国民に義務化されたが、1960年代後半よりそのリスクを懸念する声が必要性をめぐる議論を上回りはじめた結果、1976年に中止されるに至ったのだった。
医学史、医療社会学
予防接種に伴う「副反応」は、「種痘」の普及過程においては非常に警戒され、また今日でも広く認識され注意が払われている。しかし、明治期から1960年代にかけての間、それは医療や行政の場でほとんど問題とされることはなかった。本研究は、そうした予防接種に対する評価のゆらぎを追うことで、予防接種の必要性・有効性・リスクをめぐる議論の政治性を具体的に跡づけた。