研究課題/領域番号 |
18K00269
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
田村 誠 大阪産業大学, 全学教育機構, 教授 (40309175)
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研究分担者 |
張替 俊夫 大阪産業大学, 全学教育機構, 教授 (50309176)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国古算書 / 数学史 / 『九章算術』 / 『張丘建算経』 / 方程式論 / 『緝古算経』 |
研究実績の概要 |
南北朝時代の古算書として『張丘建算経』の訳注 「算経十書」中の『孫子算経』は南北朝期の古算書であるが、その訳注は令和元年度までに完了した。論文「『孫子算経』訳注稿(3)」は令和2年3月31日付の公開であるが、コロナ禍の影響で実際に公開されたのは令和2年度に入ってからである。魏代の『海島算経』、南北朝時代初期の『孫子算経』の訳注の後、研究会の会員の中では、南北朝末期の『張丘建算経』の訳注を経てから、唐代の『緝古算経』へと進みたいとする意向が強く、令和元年度に引き続き令和2年度も『張丘建算経』の訳注を進めた。中国古算書研究会で『九章算術』からの発展を比較検討しつつ訳注を進め、上巻と中巻の前半について、順に大川・大川・馬場が主として担当する3本の論文として発表した。令和3年5月現在、中巻後半と下巻前半について、順に馬場・田村が主として担当する2本の論文の掲載が決定している。下巻については、さらに田村が主として担当する1,2本の論文が発表予定であり、それで『張丘建算経』の訳注は完成予定である。 『張丘建算経』の特徴として、『九章算術』や『孫子算経』と同種の算題もある一方で、全体の量は増し、内容も複雑化している。2次方程式も一般の形で解いているが、解法については中巻までを見る限り説明的に述べられていないようである。一方、連立1次方程式ではこの時代までに解法が確立し一般化していることが窺える。この訳注が完成すれば、唐代以前の数学で中国剰余定理や連立1次方程式などの比較検証が容易になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」でも述べたように、唐代の前の魏晋南北朝時代の古算書についてその内容を整理しておくべき、という意見が研究会で多数であった。そこで、令和元年度以降は『孫子算経』『張丘建算経』と訳注を進めることで、方針が変更となった。 令和2年度はこれと平行して『緝古算経』の訳注を進める予定であったが、コロナ禍で令和2年3月~6月の研究会は行えず、7月以降にオンライン併用で様子を見ながら研究会を開くこととなった。『緝古算経』の複雑な数理を説明するには難しく、現状『張丘建算経』訳注の完成を急ぐこととなった。 以上、研究方針の変更とコロナ禍による影響のため、本研究課題である秦代から唐代の「算経十書」全般に至る比較研究は遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
遅くとも令和3年度の6月には『張丘建算経』の訳注は完成予定であり、田村が主として担当する1,2本の論文として発表する予定である。 引き続き『緝古算経』の訳注を行う。令和2年10月以降、研究会は主として対面で実施しており、対面で算題の文物・問題設定・数理について十分に議論を尽くし、訳注を完成させたい。期間を延長した令和3年度中に訳注を終了する予定であるが、論文発表は一部次年度に持ち越すことになる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年の台風19号による研究集会発表取り止めと、コロナ禍による令和2年3月の学会出張中止のため、使用額が減っていた。さらに令和2年度も各種学会・研究集会が中止または資料提示のみの発表となり、旅費としての経費を一切使っていない。 また「現在までの進捗状況」で述べたように、令和2年度の研究会では『張丘建算経』のみについて訳注を進めることとなった。『張丘建算経』はその算題の多くが『九章算術』の延長上にあるもので、令和2年度に関してはとくに新たに高額な文献等が必要にはならなかった。 また、研究発表用サーバ機の更新を考えていたが、コロナ禍による授業対応の負担が増大し、危険な状態ではあるがサーバ機を更新する余裕がなかった。
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