研究課題/領域番号 |
18K00277
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
吉丸 雄哉 三重大学, 人文学部, 教授 (10581514)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 忍者 / 忍び / 軍記 / 忍術書 / 太平記 |
研究実績の概要 |
本科学研究費助成事業の本年度の成果は、主に資料整備にあたる「忍者関連主要作品年表(江戸時代)」の増補に当てられた。研究代表者は『戦国軍記事典 ―群雄割拠篇』(和泉書院、1997)と『戦国軍記事典 ―天下統一篇』(和泉書院、2011)に記載される戦国軍記から忍びの活動について調査を行った。また、『太平記秘伝理尽鈔』から忍びの活動の記載を収集した。これらの調査内容は2019年度も引き続き増補につとめ、最終結果は2020年度に三重大学人文学部のホームページで公開する予定である。忍術書は『正忍記』『万川集海』『忍秘伝』の調査を行い、翻刻のない『忍秘伝』に関しては沖森文庫本にもとづき翻刻を作成した。翻刻は2019年度に三重大学国際忍者研究センターのホームページを利用して順次公開の予定である。 三重大学の大学院生と協力して、2018年の忍者作品および研究書籍リストを作成した。国際忍者学会の「忍者研究」2号に公表の予定である。 忍者像の形成と変遷に関しては、韓国ソウルの明知大学校で2019年12月16日に絵入本学会で発表した「絵入本にみる忍び装束の発生と定着」という発表を行った。本発表では絵入本をもとに忍者はもともと黒装束・黒覆面という忍び装束を着用するというイメージではなかったこと。また、手裏剣を使うという約束もなかったこと。18世紀後半から、忍者が黒の忍び装束に手裏剣というイメージが定着していったことを解説した。 本年度は忍者研究の派生として、佐賀県嬉野市で9月6日に開催された国際忍者学会において「海外テーブルトークロールプレイングゲームにみる忍者受容」として発表した。海外から日本及び日本人がどのように見られているのかを逆照射する行為として有効であった。国際忍者学会における発表の内容は2019年度の三重大学の紀要で公表の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近世軍記や忍術書の調査はおおむね順調に進んでいる。これにより江戸期の忍者作品年表の更新が可能になった。すべての対象資料を調査し終わったわけではないが、大半の調査を済ませることができた。また、アナログ忍者ゲームに関する研究を行う余裕もあった。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に行った近世軍記や忍術書の調査は引き続き実施する予定である。また、読本や草双紙など近世後期小説の調査および明治期の講談速記本の調査は2019年度より行う予定である。発見した個々の事例に対する考察は単行本で発表の予定であるが、原稿作成も並行して実施しており、期間中に単行本で研究成果を発表することが可能と思われる。 忍者作品および研究書籍リストは2019年分も作成の予定である。 また、悉皆調査も重要ながら、飛加藤(加藤段蔵)や石川五右衛門など有名な忍者に関してその表現の系譜をたどることで、忍者像の形成の過程が明らかになると考えている。
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