研究課題
基盤研究(C)
本研究は、日本の近世において史実の「忍び」から虚像の「忍者」像がどのような過程で形成され、また変容して現在に至ったのかを小説や芸能や軍書によって解明したものである。忍者の黒装束・黒覆面に手裏剣といったイメージの成立のほか、飛加藤・石川五右衛門という忍者が誕生するまでを明らかにし、さらには近世に編まれた軍書では執筆された当時の忍者観や戦争観にもとづき、中世における忍びの運用が描かれていることを明らかにした。研究成果のほとんどは『忍者の文学史』(KADOKAWA)として発表した。
近世文学
本研究がなされる前の忍者研究は事実面の探究を中心になされていたが、実際には真偽のあやふやな二次資料をもとに虚構の忍者像を史実の忍びとみなして論じてきた。本研究が忍者が後代に記述されていくなかで、創作的要素がどのように入っているのか明らかにしたことで、忍者の文学史が大きく更新されるとともに、歴史的な忍者研究における一次資料の重要性が認識されるようになり、忍者学がより高次の段階に大きく前進したといえる。