研究実績の概要 |
当該年度は、『ア嚢鈔』の電子化作業、『アイ嚢鈔』と『三国伝記』の本文分析作業などを中心に行ったが、学部長としての通常業務に加え、コロナ禍への対応で時間を取られることが多く、予定通り進んだとは言いがたい。しかも、コロナ禍のために県外への調査にも行けず、また、参加を予定していたヨーロッパの学会はWeb開催となるなど、旅費に予算を使うことが全くできなかった。だが、資料や書籍の取り寄せ、購入によって研究を進め、以下の成果を収めることができた。 1.共著掲載論文「河野本『源平合戦図屏風』に描かれた『平家物語』―「一の谷合戦」における忠度・通盛・教経を中心に―」、2.学術誌論文「教育学部の学生と読む古典文学―必修科目における『平家物語』『太平記』の読みの実践を中心に―」、3.編著掲載論文「『アイ嚢鈔』と『三国伝記』─斑足王説話の比較を中心に─」、4.国際シンポジウム司会「Writing and Remembrance in the "oboegaki" Genre : Battle Accounts, Literary Techniques, and the Reimagining of War Tales」、5.国内学会シンポジウム口頭発表「『古典を〈読む〉』授業へ―『義仲の最期』を例として―」 1は戦国時代から近世初頭にかけての合戦図屏風の制作と享受の問題を論じたものである。2は本研究で進めてきた『平家物語』や『太平記』の享受史の研究を、大学教育の現場で生かした事例として報告したものである。また、3は『三国伝記』と『アイ嚢鈔』の比較をもとに、それぞれの性格の違いについて論じたものである。4は中世から近世にかけての武士の「覚書」をテーマとしたパネルの司会を担当したものである。さらに、5は本研究で進めてきた『平家物語』『源平盛衰記』の研究成果を教育現場に生かすための提言である。
|