昨年度に引き続き、新型コロナウイルスの感染流行のために遅れていた調査を、できるところから継続した。
まず、熊本博物館蔵の和本群については、2回調査を果たすことができた。村田三節医書コレクション、前原健太郎旧蔵和本(古医書)に引き続き、同館に所蔵される草野幸次旧蔵和本に取り組んだ。ただ、草野幸次コレクションには、和漢籍のほか、器物や近代活字本が存在したり、一部の和本が別のコレクションに紛れ込んだりしたことから想像以上に整理に時間を要したが、和漢籍の仮目録作成に成功した。内訳は、『正文章軌範評林註釈』などの漢籍・準漢籍、『詩学含英』などの漢詩、各種法帖や『十体千字文』などの書道、『観聚方要補』などの医学、『春色梅ごよみ』などの人情本、『地理小学』などの明治の小学校教科書、そして浮世絵がコレクションの多くを占めたが、中でも浮世絵の貼り交ぜ帳は圧巻で、また、『春色梅ごよみ』のほか、『春色英対暖語』『梅暦余興 春色辰巳の園』『清談松の調』『春色恵の花』と、為永春水の人情本が多く見られたことも特徴的であった。 次に、熊本大学図書館蔵の菅野是正旧蔵蘭書については、現物が見られない状況が続いている。ただし、仮目録は既に作成し、内容は『蘭学の九州』に織り込み、既に初紹介したところである。調査が可能になり次第、本の詳細確認に取り組む。 最後に、後藤是山記念館蔵の写本については、同館工事により調査日程が整わなかった。ただし、仮目録は既に作成し、250点までの詳細確認は終わっている。残り750点については今後継続する。
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