令和元年度までに資料調査をできた範囲内での成果となった。検討の過程では、柳田国男における言語観および表現構造に関する検討成果を活用し、そのうえでそれらを具体的なテキスト検討に集約させた。その結果、『先祖の話』、および『豆手帖から』『秋風帖』『海南小記』の表現に関する共通した特質として、次の点を明らかにすることができた。それは、テキストに記述された内容やテーマに関して、書き手の記述だけで完結するのではなく、読み手の能動性が発揮される余地を保ち、読み手に思考と発話の主導権を譲りつつこれからの実践につながる思考の当事者となるよう促す点であった。
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