1930年前後は帝国日本の出版資本が植民地および軍事占領地域を市場としていた時期である。本研究は、植民地朝鮮出身の読者、とりわけ識字能力のない人々までもが、①帝国日本の合法/非合法出版市の担い手たちによって「読者」として欲望されていたこと、②植民地朝鮮の読者が日本語メディアを積極的に欲望していたこと、③さらに、みずからが「日本語」を拡散させるメディアとなっていたことに注目したものである。本研究は、帝国日本の空間フレームを参照軸としながら、①②③によって作られる新たな文化の編成をめぐる「言語-階級」間の抗争と、それをめぐる記憶が、冷戦構図を媒介に、如何に歴史化されたのかを明らかにしたものである。
|