研究課題/領域番号 |
18K00298
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
徳竹 由明 中京大学, 文学部, 教授 (30387609)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 対馬藩 / 蒙古襲来 / 対外戦争 |
研究実績の概要 |
2018(平成30)年度は、科研費・大学の研究費を含め、長崎県長崎市の長崎歴史文化博物館へ7回、長崎県対馬市の対馬市教育委員会へ7回、長崎県平戸市の平戸市平戸図書館へ1回、文献調査を実施しに赴いた。そして山口文庫・藤氏文書・沖図書等の文書を調査し、主として蒙古襲来関連の対外戦争関連言説に関する文献を探した。また対馬市や平戸市では、文献調査の合間に、志々伎神社等の蒙古襲来に纏わる伝承地の現況調査も実施した。 そうした文献調査等を踏まえ、論文「対馬豊崎郷の「文永の役」関連神社縁起説について」(『伝承文学研究』67号 2018〈平成30〉年8月)を執筆し、対馬豊崎郷の志々伎社・軍殿社に纏わる文永の役関連言説の生成の背景について論じた(なおこの論文においては、今回の科研費による調査結果の反映は一部にとどまっている)。 またいずれも私的且つ小さな研究会ではあるが、「異域の会」例会(2018〈平成30〉年11月17日 於青山学院大学青山キャンパス)において研究発表「対馬の蒙古襲来周辺言説」を、第七回名古屋中世文芸・歴史研究会(2019〈平成31〉年1月12日 於中京大学名古屋キャンパス)において研究発表「対馬藩に於ける中世文芸の受容 ――蒙古襲来言説を中心に――」を行い、文永・弘安両度の蒙古襲来の前後、及び間にも蒙古軍が対馬に襲来したとの言説について、その生成の背景について論じた。主として近世期の対馬の人々が、どのような意識の下どの様な資料を基に新たな「伝承」を構築していったのかを、少しは明らかにできたのではないかと考えている。現在この二つの研究発表について論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精力的に文献調査を実施している。年度の途中により高精度のデジタルカメラを購入した結果として、撮影ミスが減り、また今までの調査した文献の撮影不鮮明箇所の再撮影を行うなど、調査の精度がより一層高まった。もちろん毎回の調査で、こちらが期待するような資料が出てくるわけではないが、調査の回数を多くすることで、例えば対馬市教育委員会の藤氏文書の調査では、「三浦の乱」に関する言説を記載した文書を発見するなど、研究は凡そ順調に進んでいるといってよい。 なお調査の進展とともに、壹岐や平戸に於ける「対外戦争関連言説」を対馬のものと比較したいという考えも生じてきた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き長崎歴史文化博物館・対馬市教育委員会での文献調査を実施し、且つ2020(令和2年)度よりは再開館予定の対馬歴史民俗資料館での文献調査をも実施していく。もちろん文献調査に際しては、なかなか研究上有用な資料が見つからないことも多々あるが、粘り強く調査を続けていくことで、着実に研究を推進していくことが可能と考えている。 その他、文献調査の合間を縫って、対馬での伝承地の現況調査や伝承の聞き取り調査も積極的に行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
デジタルカメラが想定より安く購入できたり、また飛行機のチケットを調査よりかなり前に安く購入したりしたために、若干の余剰が生じた。 主要な調査先である長崎市・対馬市へは高額な交通費が必要なため、翌年度分と併せて交通費として使用したいと考えている。
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